82話 ティオの記憶とウロボロス
数時間後――
「ふむ……」
「謎は深まるばかりでしたね……」
インペリアル内の客室で、ティオとアイリスは小さく唸っていた。
「三周前のマスターのこと、そしてアンデッド部隊ウロボロスのことについて詳しく聞こうとしたけど」
「その辺りのことについては伝えることができないなんて……」
ティオたちに続いてため息を吐くベルゼビュートとダリア。
そう、それらの件についてティオたちはサヤに尋ねてみたのだが、ティオが自分で記憶を取り戻さない限りは一周目の魔導王シュヴァルツとの約束により詳細は伝えられないと、サヤに言われてしまったのだ。
「そういえば、ティオ殿には魔導王シュヴァルツの記憶がどの程度残っているのだ?」
「……ん、気になる」
顎に手を当て唸るティオに、ユリとスズがそんなふうに問いかける。
「ぼくの中にある記憶は魔神を討滅した時の記憶、そして黒魔術士の本当の力に関するものが断片的に……といった感じです」
彼女たちの質問に正直に答えるティオ。
付け加えて、あとは何となく言葉にしようのない感覚的なものが自分の中にあることも伝える。
それがあったからこそ、サヤに対し懐かしさのようなもの……そして不思議な安心感を覚え、アンデッドが相手にも関わらず会話に応じたのだと。
「ま、待ってくれ、ティオ殿。黒魔術士の本当の力に関する記憶が断片的に……と今言ったが……」
「……まさか、これ以上強くなる可能性があるってこと??」
恐る恐ると言った感じで新たに質問を投げかけるユリとスズ。
彼女たちの疑問に今度はベルゼビュートが代わりに答える。
「何を言ってるの? 当たり前じゃない。マスターは今でもとんでもない強さを有しているけど、本来の力は現状を遥かに超えるわ。魔導王だもの」
と――。
「な、何だか頭が痛くなってきたぞ……」
「……私も」
ベルゼビュートの言葉を聞き、ユリとスズは疲れたように自分の頭に手を当てる。
そんな彼女たちのことなどお構いなしにリリスとフェリスはベッドの上で、すぴーすぴーと寝息を立てているのであった。
小一時間後――
「ん〜……!」
「おはようです〜……」
ベッドから眠そうな声でリリスとフェリスが起き出した。
眠気まなこでティオの姿を見つけるとリリスはティオの膝の上に、フェリスは頭の上にちょこんと収まる……
そんなタイミングであった。
「入るぞ、ティオ殿」
ドアの向こうからそんな声が聞こえてくる。
どうやらサヤが来たようだ。
「どうしたんだい、サヤ?」
ドアを開けて入ってきたサヤにティオが問いかけると、サヤは「そろそろ昼だ。腹減らないか?」と言ってくる。
「ごはん!」
「お腹すいたです〜!」
サヤの言葉を聞き、リリスとフェリスが完全に覚醒する。
「え? まさか料理までサヤたちが用意してくれるの?」
「もちろんだ、ティオ殿。ここには物質保存魔法がかけられた食材が豊富にある。そして料理人もいるから美味いものが食べられるぞ」
サラッと物質保存魔法などととんでもない単語を口にするサヤに、ユリにスズ、ダリアはまたもや頭を抱えるのであった。
ベルゼビュートはともかく、それに動じないあたり、ティオとアイリスはもはや常識に囚われないように思考が染まってきているようだ。
リリスとフェリスに至っては何を言っているのか理解してないので、「わ〜い!」「ごはんです〜!」と、サヤのあとにきゃっきゃっとついていく始末である。
そんな中ユリ、スズ、ダリアが……
「料理人って言ってたけど……」
「……ここの料理人ってことはアンデッド?」
「大丈夫でしょうか……」
などと、またもや疲れた様子である。




