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3話 ピンチの剣姫を助けよう

「よし、さっそく入るとしよう……!」


 準備を整えてからグラッドストーンを出て少し――


 ティオはとある洞窟のような場所の前にたどり着いた。

 この中に入れば、モンスターの巣窟、迷宮というわけである。


 中に足を踏み入れるティオ。

 すると岩肌の道がどこまでも続く仄暗い空間となっていた。


(なるほど、聞いていた通り、オーソドックスな迷宮だな)


 周囲を確認するティオ。


 迷宮にはいくつもの種類があり、このような岩肌の道がどこまでも続くようなものもあれば、鬱蒼と草木が生い茂る森林型のもの、溶岩の噴き出す火山型の迷宮など様々である。


 場所によっては特別な装備を用意しなければならないが、このような洞窟型のオーソドックスなものであればそれも不要であろう。


『ピキーッ!』


 迷宮を進むこと少し、ティオの前に一匹のモンスターが現れた。

 半液状型のモンスター、スライムである。


 モンスターには大きく分けて六つのランクが存在し、その内訳は以下のようになっている。


 Eランク=武装をすれば一般人でも倒せるモンスター。


 Dランク=戦闘に覚えのあるものでなければ倒せないモンスター。


 Cランク=武装した成人が複数人で挑めば討伐可能。単騎で挑む場合はベテランでなければ討伐は難しい。


 Bランク=小さな村であれば滅ぼしてしまえるモンスター。挑む場合は強力なスキルを持った者が必要となる。


 Aランク=大都市をも滅ぼす事がある上位のモンスター。例外はあるが、討伐には一流の戦闘技術・スキルを持つ者が複数人必要。


 Sランク=国家を滅ぼしかねない戦闘力を持ったモンスター。国家戦力をもって対応するべし。単騎で対応できるのは〝勇者〟などの特別な力を持つ者や、それに準ずる力を持った者のみ。


 そんな六つのランクの中で、スライムは最下級のEランクに位置している。


「まずはこれだな、《ブラックバレット》ッ!」


 右手を前に出し、ティオが叫ぶ。


 すると彼の目の前の空間から、漆黒色の魔力の塊が弾丸のように飛び出した。


 ドパンッ!


 ――という派手な音を立てて、《ブラックバレット》がスライムにヒットする。


 それと同時に、スライムは『ピギィィィィィィ――ッ!?』という叫び声を上げ……活動を停止した。


 通常、スライムを倒すには体の中心に存在する核を破壊しなければならない。

 しかし、今回ティオは、《ブラックバレット》を表面に当てただけである。


 では、なぜスライムは力尽きたのか?


 それは黒魔術の特性のおかげである。


 黒魔術は〝奪う〟という特性を持っている。


 そして《ブラックバレット》は敵にヒットした際に、生命力を奪う効果を持っている。


 《ブラックバレット》自体の破壊力はそこそこだが、その生命力を奪う効果が、スライムの持つ生命力を超えていた……というわけである。


 通常のスキルに例えるならば、《ブラックバレット》は中級スキル並みの強さを持っていると言えるだろう。


「うん、やっぱりEXスキルは強力だな」


 スライムが力尽きたのを見て、満足げに頷くティオ。


 EXスキルの中で、《ブラックバレット》は最弱のスキルである。

 にも関わらず、それだけの力を有しているのだから、まだ使ってない他のスキルや、これから派生するであろう、新たなEXスキルに期待が高まる。


 迷宮三層目――


『ブヒィィィィィ――ッ!』


 そんな鳴き声とともに、一体の異形が現れる。


 豚人型のDランクモンスター、〝オーク〟だ。


「やっとDランクか、この迷宮は効率が悪いな……」


 向こうの方から駆けてくるオークを眺めながら、ティオがぼやく。


 黒魔術士のスキルは、敵から奪った生命力の多さに比例して育っていく。

 つまり、敵が強ければ強いほど――生命力が高ければ高いほどその効率は上がるわけである。


 ここにくるまで、スライムを含めたEランクモンスターしか現れなかったので、全て《ブラックバレット》で蹴散らしてきたほどである。


「まぁいい。Dランクが出てきたことだし、次のスキルを使ってみよう。いけ……《ブラックジャベリン》ッ!」


 ティオの声とともに、一条の漆黒の閃光が迸った。


 次の瞬間、オークが『ブギャァァァァァァ――ッ!?』と、悲鳴を上げたではないか。


 その腹を見ると、禍々しい形をした漆黒の魔槍が突き刺さっている。


 これこそが、先ほど迸った閃光の正体だったのだ。


 閃光と見間違えるほどの発動スピードを誇る、黒魔術EXスキル《ブラックジャベリン》――


 だが、このスキルの恐ろしいところは発動スピードだけではない。


 Dランクモンスター、オーク。

 その生命力はなかなかのものだ。


 だというのに、オークは白目を剥いて、その場に倒れ息を引き取った。


 スキルとしての威力、そして奪い去る生命力の量も凄まじい。

 超級スキルと同等……とまではいかないものの、明らかに上級スキルの域を超えていると言えるだろう。


「ちょうどいい。オークの死体ならギルドで高く売れるだろうし、三つ目のスキルを使おう」


 そう言って、右手をオークの死体に翳すティオ。


 そのまま「《ブラックストレージ》……」と、唱えると、オークの死体が黒い霧のようなものに包まれた。


 やがて霧が霧散すると……そこからはオークの死体が綺麗さっぱり消え去っているではないか。


 黒魔術EXスキル《ブラックストレージ》――


 対象となったものの存在を魔力よりももっと細かなレベル……魔素にまで分解し、スキルで作り上げた特殊な空間に〝奪う〟スキルだ。


 再びスキルを発動することで、対象を再構成し、取り出すことも可能だ。


 つまり、便利な収納スキル……というわけである。


 通常はこのような芸当を行うには〝アイテムボックス〟と呼ばれる、特殊なマジックアイテムが必要になるのだが、それには容量の限界もある上に、一般人が手を出せるような額ではない。


 対し、《ブラックストレージ》の容量は無限に近く、魔力の消費量もそこまでではない。


 ハッキリ言って、アイテムボックスの上位互換である。


 新たなスキルの効果を確認できたことで、ティオは自然と笑顔になる。

 ホクホク気分で次々とモンスターどもを討伐しては回収し、ティオはとうとう迷宮十層目を迎える。


「なんだ? この匂い……血か――?」


 迷宮十層目を進むこと少し――


 鉄のような匂いが漂ってきた。


 騎士として勇者パーティにいた経験でティオにはなんとなくわかる。

 この匂いが、血の匂いだということが……。


 急いで駆けるティオ。


 もしかしたら冒険者が怪我を負っているのかもしれない。


 走ること少し、開けた場所に出た。


「くッ! どうして十層目にレッサードラゴンが……!」


 苦しげな声をとともに、ティオの視界に肩から血を流す一人のエルフの少女が飛び込んできた。


 よく見ればギルドで《剣姫》と呼ばれていた美少女エルフ、アイリスではないか。


 そしてその前後を、二体の巨体……Aランクモンスターである〝レッサードラゴン〟が囲んでいるではないか。


 通常、Aランクモンスターは十五層目以降でないと現れない。

 だというのに、この状況はどういうことだろうか。


「今助けるぞ! 《ブラックジャベリン》ッ!」


 アイリスを助けようと、ティオが叫ぶ。


 それとともに、漆黒の閃光が迸る――


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