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転生魔導王は、底辺職の黒魔術士が、実は最強職だと知っている  作者: 銀翼のぞみ
一章

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11話 七大魔王ベルゼビュート?

「あら、この私が使い魔として呼び出されるなんて、とうとう時が来たのね?」


 魔法陣の中からは現れた〝それ〟は、そんな風に言ってティオを見据える。


「女の人……」


「ですね……」


 ティオに頷くアイリス。


 そう、魔法陣から出てきたのは、一人の女性だった。


 ゆるくウェーブした砂金のような長髪、瞳の色は髪と同じ金色(こんじき)

 白磁のような肌を、胸もとの大きく開いた漆黒のゴシックドレスで包み込んでいる。


 どこか退廃的な印象を与える、絶世の美女だった。


「それで、あなたが私のことを呼び出したのよね?」


 そう言って、静かに美女がティオの方へと近づいてくる。


「あ、えっと……試しに目覚めたスキルを使ったらこのような結果になっただけでして……」


 美女の浮かべる妖艶な笑みにドキッとしながら、ティオが応じる。


「そう、それなら自己紹介が必要ね。私の名は〝ベルゼビュート〟よ。よろしくね、マスター?」


「べ……ルゼビュート……?」


「え? その名前って……」


 ベルゼビュートの自己紹介に、戸惑いを見せるティオとアイリス。


 二人がそうなるのも当然だ。


 謎の美女が口にしたベルゼビュートという名――


 それはかつてこの世界を恐怖に陥れた魔神、その配下である七大魔王の一柱の名であったからだ。


 であった……というのにはワケがある。

 魔王ベルゼビュートは、七大魔王の中で唯一人間側についた、心優しき魔王だったからだ。


 ベルゼビュートは、人間に、魔神や他の魔王の情報を与え、勝利へと導いた。


 そんなベルゼビュートは、今や〝聖魔王〟と人々に崇められており、普段はこの世とは隔絶された場所で過ごし、この世に大きな転機が訪れる際に〝巫女〟と呼ばれる存在に、様々な情報を預言として授けるとされている。


 そんな存在と、同じ名を名乗る目の前の美女――

 いったい何者なのだろうか、彼女は最初に使い魔として召喚と言っていたが……。


「ふ〜ん、驚いている様子ね。いいわ、説明してあげる。数百年前――私は〝真黒ノ扉〟を開いた黒魔術士と契約を交わし、彼の使い魔となったわ。そして次にまた真黒ノ扉を開く者が現れた時、その者に仕えるという契約もしたのよ」


「真黒ノ扉……という単語の意味はわかりませんが、その口ぶりだと、あなたは……」


「だから言ってるじゃない、私は元七大魔王が一柱、ベルゼビュートよ。そして今日から、あなたの使い魔ね」


 美女――ベルゼビュートの答えに、ティオとアイリスはとうとう絶句してしまう。


 彼女は本当のことを言っているのだろうか……?


 そこら辺の人物がそのようなことを言えば、鼻で笑って終わりなのだが、ティオが発動したスキルの中から現れた点を考慮すると何とも……。


「信じられない……って顔をしてるけど、別に私はそれで構わないわよ? マスターの役に立つのが私の使命だし、そのご褒美にマスターの黒魔力をもらうのが私の生き甲斐だもの」


 そう言って、イタズラっぽい視線でティオを見つめるベルゼビュート。


 信じてもらえなくても構わない――

 そんな彼女の言葉が、先ほどの話にイヤに真実味を持たせる。


「と、とりあえず、話を先に進めましょう。ベルゼビュートさん、ぼくはティオと言います。そして彼女はぼくの仲間のアイリスさんです」


「ティオ様にアイリスね、よろしく」


 二人に色っぽい表情でウィンクを飛ばすベルゼビュート。

 あまりに妖艶な彼女の雰囲気に、ティオだけでなくアイリスまでドギマギしてしまう。


「ベルゼビュートさん、あなたはぼくの使い魔だと言ってましたが、いったい何ができるのですか?」


「そうね、今のマスターは真黒ノ扉を五つ開いたみたいだから、私が使えるのは二つのサポートスキルになるわね」


「五つの真黒ノ扉……それって、EXスキルのことですか?」


「その通りよ、マスター。あなたが真黒ノ扉を開くたびに、この世界で私が使えるスキルが増えていくのよ。楽しみにしていてね?」


 そう言って、ベルゼビュートが説明を締めくくる。


 百聞は一見にしかず。

 ティオはベルゼビュートに、サポートスキルとやらを使ってもらうとする。


「それじゃあいくわよ? この者たちに祝福を……《ベルゼギフト》!」


 高らかに叫ぶベルゼビュート。


 その刹那――

 ティオとアイリスの体が僅かに漆黒色の輝きを放ち始めた。


「これは……!」


「すごいです! 体の底から力が湧き上がってきます!」


 興奮した声を漏らすティオとアイリス。


 そんな二人に、ベルゼビュートが――


「ふふっ……当たり前よ? 私のスキル、《ベルゼギフト》は対象の全ステータスを大幅に向上させる力を秘めているんだもの」


 ――得意げな表情で、そんな説明をする。


 さっそく力を試してみよう!


 ワクワクした様子で、ティオとアイリスは次の階層へと向かうことにする。


「ふふふっ、はしゃいじゃって……今度のマスターはとっても可愛いわね。…………食べちゃいたい♡」


 先へと進むティオを眺めながら、ベルゼビュートは、うっとりと金の瞳を細め、舌舐めずりをするのだが……当のティオは気づいていない。


【読者の皆様へ】


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