10話 ビキニアーマー剣姫と、新たなEXスキル
「ア、アイリスさん、本当にそんな格好でいいのですか?」
「もちろんです! ティオ様とパーティを組んだことにより、わたしも本気で戦うことができます!」
自信満々な様子で答えるアイリス。
ティオの武器を選び終わったあと、彼女も防具を一新した。
そんな彼女の今の格好は、非常に露出の高い、まるで水着みたいな格好だ。
他にもガントレット、ハイブーツ、そして肩当てをつけている。
いわゆる〝ビキニアーマー〟というやつだ。
本来、アイリスはスピードを重視した戦い方が得意だったのだが、孤高な彼女は一緒に組む仲間がいなかったため、今までは防御力を考慮して少し重めの鎧を装備していた。
しかし、中衛から後衛を得意距離とする魔法スキルを持つティオとパーティを組んだことで、彼による援護を受けられる。
ならばと、アイリスのスピードを最大限に活かせる、超軽量の防具――ビキニアーマーを購入したというわけだ。
「ふふふ……っ」
蠱惑的な笑みを浮かべ、アイリスがティオの腕を抱きしめてくる。
ビキニアーマ越しに、彼女の柔らかな感触が伝わってきて、ティオは思わず「ひぃ……!?」と、小さな悲鳴を漏らしてしまう。
「んにゃ〜! おねショタですにゃん!」
誘うような表情をしたアイリスと、顔を赤くして戸惑うティオを見て、ヴァルは虎耳をピコピコさせて大興奮である。
◆
迷宮一層目――
「ティオ様、まずはわたしの力をお見せします!」
迷宮に入り、二体のゴブリンの姿を捉えたところで、アイリスが腰にした鞘から刃を抜く。
彼女の武器は刀だ。それも右手に長刀、左手に短刀を構える二刀流だ。
そしてそのまま、タン――ッ! と、軽く踏み込むと、一気にゴブリンへと距離を詰める。
とんでもないスピードに、ゴブリンが『グギャッ!?』と、驚愕の声を漏らす。
そのまま、慌てて短剣を構えようとするが、もう遅い。
アイリスは右手の長刀を閃かせ、ゴブリンの首をスパンッ! と刎ねた。
もう一体のゴブリンが、このままではまずい! と逃走を図るが、そうはいかなかった。
アイリスが左手から短刀を投擲する。
まっすぐとゴブリンへと短刀は飛んでいき、その背中を胸まで貫いた。
「いかがでしょうか、ティオ様!」
「すごいです、アイリスさん! まさかスキルを使わずにこんな動きをできるなんて……!」
彼女の立ち回りを見て、ティオは興奮を覚える。
一切に無駄がなく、それでいて流れ、舞うかのようなアイリスの戦闘姿。
彼女の美しい容姿も相まって、ティオの目を釘付けにした。
「ふふっ……やっぱり装備が軽いと本来の動きができていいですね」
微笑みを浮かべるアイリス。
やはり前の装備ではここまでの動きができないのだろう。
「それでは、次は連携の練習をしつつ、迷宮の十層目を目指しましょう」
「わたしの依頼に付き合ってもらってしまってすみません」
アイリスが申し訳なさそうな表情を浮かべる。
昨日は色々なことがあって忘れていたが、彼女はミノタウロスナイトを討伐するクエストの途中であった。その途中でレッサードラゴンに襲われたのを思い出したのだ。
「いえいえ、ぼくのスキル強化も兼ねてるので気にしないでください」
「ありがとうございます、ティオ様」
ティオの気遣いを嬉しく思い、アイリスが笑う。
そんな彼女に応じながら、EXスキルの《ブラックストレージ》を発動し、ゴブリンの死体を回収するティオ。
せっかくなので、迷宮で倒したモンスターの死体は全て回収し、ギルドで買い取ってもらうつもりだ。
◆
迷宮五層目――
『ブヒィィ!』
『ブヒ! ブヒッ!』
耳障りな鳴き声とともに、豚人型のモンスター、オークが現れた。
その後ろには三体のゴブリンの姿も確認できる。
どの個体も、アイリスを血走った目で見つめている。
オークもゴブリンも、異種交配が可能で、性欲の強いモンスターだ。
見目麗しい、そして露出の高い格好をしたアイリスを見て、彼女を苗床にしようと興奮しているようだ。
「いくぞ、《ブラックバレット》ッ!」
ティオがEXスキルが一つ、漆黒の魔弾を複数放つ。
とんでもないスピードで襲いくる魔弾に、滅多撃ちにされるオークとゴブリン。
敵が怯んだ隙を突いて、アイリスが敵のど真ん中へと飛び込んだ。
「喰らいなさい! 《円月閃》!」
スキルの名を叫び、刀を手にその場で高速回転するアイリス。
剣聖のクラスが所持する、中級の戦闘スキルだ。
射程に入ったオーク一体の胴体と、ゴブリン三体の首が切断され宙を舞う。
「終わりだ、《ブラックジャベリン》!」
再びEXスキルを放つティオ。
彼の目の前の空間から、漆黒の魔槍が一条の閃光となって迸り、最後に残ったオークの土手っ腹を、ドパン……ッ! と貫いた。
「ふぅ、だいぶ連携の練度が上がってきましたね、ティオ様」
「はい、アイリスさんがぼくの魔法スキルに合わせて動いてくれるので、とても戦い易いです」
アイリスの状況判断能力は非常に高かった。
一緒に戦い始めてから何戦目かで、彼女はティオが何も言わずとも、彼の求める前衛の動きをしてくれるまでに至った。
そして彼女の攻撃で、一発で仕留めきれない敵は、ティオがEXスキルを使って始末する……そんな流れが出来上がりつつあるのだ。
「こ、これは……!」
「どうされました、ティオ様!?」
モンスターの死体を《ブラックストレージ》で回収する途中で、興奮した声を漏らしたティオに、アイリスが心配そうに駆け寄ってくる。
「アイリスさん、新しいスキルを取得しました」
「新しいスキル! おめでとうございます!」
たった今、《ブラックストレージ》を使ったことで、スキルの必要使用回数に達し、新たなEXスキルに覚醒したようだ。
今、ティオの視界に表示されているステータスは以下の通りだ。
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名前:ティオ
種族:人間
スキル:《ブラックドレイン》
EXスキル:《ブラックバレット》《ブラックジャベリン》《ブラックストレージ》
【NEW】《ブラックサモン・魔》《ブラックサモン・械》
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EXスキルに新たに《ブラックサモン・魔》と《ブラックサモン・械》の項目が現れた。
ティオが思い出せた前世の記憶は一部のみ。
これらがどのようなスキルなのかわからない。
「さっそく試してみることにしますね」
そう言って、試しに《ブラックサモン・魔》を発動するティオ。
すると彼の目の前に、黒紫の巨大な魔法陣のようなものが展開する。
そしてその中から――
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