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孤独な少女の物語

作者: Sala

少女は孤独だった


――何故(なぜ)此処(ここ)にいるのでしょう


私は誰でしたか




大切なものは手から零れ落ち、自身の輪郭(りんかく)(おぼろ)げて消えいく


心は既に絶望で染まり、(からだ)は地に(かえ)る日を待っていた


(ひと)り、私は存在し(いき)ていた




そんな矢先のことである


彼が私と出会ってくれたのは


突如(とつじょ)訪れ、忘れかけていた私の名を呼んだ彼


驚きのあまり私は(わめ)き散らし彼に(きず)をつけた


それであっても優しく抱き寄せ言葉をかけてくれた


愛を(ささや)いてくれた


私は今まで感じたこともないほどの温もりを覚えた


()く私の(なみだ)をそっと(ぬぐ)い、(そば)にいてくれる彼に安堵した




「私は貴方を愛している


貴方は私を思ってくれるか


この手を握り共に生きてくれるか」




そう問われた時、首を縦に振り「はい」と答えた


彼は微笑み、深く抱き締め頬に接吻(せっぷん)してくれた


気恥(きはずか)しくもあったが嬉しかった


私たちを祝福するように一羽の鳩が舞い降りてきた


私は彼の腕の中で眠りについた


それはここ十数年で与えられたことのない幸福(しあわせ)時間(モノ)だった




目覚めるとそこに彼はいなかった


もしや夢だったのだろうか


――いや、それはない


(うち)(あかり)(とも)されているかのように熱く、また躰も誰かに抱擁(ほうよう)されたかが如くに温かかったのだから


けれど彼は何処に行ったのだろうか


ずっと共にいると言ってくださったのに


少し不安げになり(おび)える私のもとへ一羽の鳩がやって来て、胸元を(つつ)いた


その時何かが走った


見えないだけで中にいる、そう教えられた気がした


そしてそれは間違いでないのだろう


鳩は一声()き私の肩に止まった




「貴方……此処(ここ)にいらっしゃったのですね


真に私の傍にいてくださるのですね、あの言葉のままに」


止まったはずの泪が再度溢れる


けれどこれは歓喜(かんき)から流れるものだ


「私はもう独りではない、貴方と共に歩んでいけるのですから


……貴方、ありがとうございます」


(すべ)て忘却した私を呼び、思い出させてくれたこと


死んだような私に、息を吹き込んでくださったこと


(とが)ばかりある私を、(ゆる)してくださったこと


(みじ)めな私を、愛してくださること


未来永劫(みらいえいごう)一緒にいてくださること


その全部が喜ばらしい


「貴方について参ります


私は何もわからず彷徨(さまよ)うしかできませんから


どうか私を導いてください、貴方の()きと思われる道へ」


それを聴くや否や、鳩は再び羽を広げ天空へと姿を消した




後に残されたは私だけ


――(いな)私と彼(二人)だけ


「お(した)いしておりますわ」


そう呟いて足を踏み出す


今までと同じ世界、同じ現状だが恐れはない


彼――愛する方がいらっしゃる限り、私は独りではないのだから


私は愛しい方()と共に生き(存在し)ていくのだから

もう少女は独りでない




感想や誤字脱字などありましたら教えてくださると幸いです

貴方の心に何か残せましたら恐悦至極にございます

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