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6.

「淡い色か濃い色か、どちらにするか悩むわね……」

「どちらにしてもクシャーラ様とは被らないから、どちらでもいいわよ」

「どちらでもいいって、ユタリア。あなたのドレスなのよ?」


  今日はお母様とミランダと共に三人で針子を囲みながら、ユグラド王子とクシャーラ様の婚姻発表式に着ていくドレスについて話し合っている。


 本来ならば出席する夜会の数か月前から用意するのだが、今回は一か月前に選ばれなかったことを正式に通達されたこともあって、基礎を作ってもらっていた二着のどちらかを選んでこれから装飾を施してもらう形となる。


  候補は私の瞳と同じく深い青色のもの、またはよく晴れた空のように淡い青色のものである。


  今回の主役、クシャーラ様は習わし通り、ウェディングドレスのような純白のドレスを着てくるはずだ。私が気にするべきはクシャーラ様の他にはリーゼロット様である。


 だが彼女は自分の瞳と同じ色のドレスを好んでいるようで、深紅のドレスを身に纏っていることが多い。さすがは夜会の赤薔薇である。


 つまりどちらとも被らない。となればそこまで熱心に色を選ぶ必要などないのだ。

 

「結局はどちらも着るんだからいいじゃない」

「そうは言っても、この夜会でユタリアがフリーであることが発表されるのよ? 今回のドレス選びは今まで参加してきたどの夜会よりも慎重に選ばなくっちゃ!」

「まぁ、そうねぇ……」


 クシャーラ様が選ばれたことが発表されることはすなわち私とリーゼロット様の婚姻が果たされなかったことを意味する。


 ユグラド王子の婚姻者発表に参加する客の中のほとんどは彼のお相手よりも選ばれなかった私達に注目をする。


 同年代の、未婚の男性を有している家なら特に、だ。


 今はまだブラントン家からしか婚姻の申し込みや夜会の招待状が送られてきてはいないが、その日を境に私と、正確にはハリンストン家と交流を持ちたい家から大量の手紙が送られてくることだろう。


 お母様もお父様と同様に私を愛してくれていて、生涯の相手なのだからゆっくり選びなさいとは言ってくれている。だが『チャンスは無駄にするな』が持論であるお母様は、今度の夜会をデビュタントよりも重要な日だと考えている。


 思えば私のデビュタントはユグラド王子とクシャーラ様とリーゼロット様との四人で行動するものであって、他のご令嬢達とはわけが違った。だからお母様が張り切るのもそのせいなのだろう。


「ユタリアと話してたんじゃ進まないわ。ミランダ、私達でユタリアに合うドレスを決めるわよ!」

「はい、お母様!」


  だからこそやる気の見えない私を早々に切り捨てて、お母様とミランダは針子とドレスのイメージを詰めていく。


 部屋の端っこで背の高い椅子にちょこんと行儀よく座っているだけの私の役目といえば、たまの採寸くらいなものだ。


  日が傾いた頃、やっと納得のいくものができたらしく、お母様とミランダと共に部屋で針子を見送った。


 結局、デザインはおろか色ですらも私に告げられることはなかった。


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