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十一

 それからもまだ私がユリアンナであると信じきれていないエリオットのために、一度ハリンストン屋敷に戻ってお忍びセットを取って来ることになった。


 お忍びにはお馴染みとなったお手製ポンチョを羽織った、ユリアンナの姿を見せるとエリオットはひどく驚いた様子で、私の周りを何周かすると「ユリアンナだ!」とようやく納得したようだった。


  そしてエリオットの希望により、その姿のまま城下町で買い食いをすることとなった。

 食べるのはあの店のクレープだ。ユリアンナとしての私とエリオットが初めて出会った場所、というのもあるがただ単純に二人とも食べたい物が合致したのだ。


「やっぱり美味しい……」

 まさかもう一度食べられるとは夢にも思っていなかった。モチモチの生地によって、ひとときの幸せへと誘われている私を横目で見て、エリオットは「本当にユリアンナなんだな……」と呟いた。


 ユリアンナ=ユタリアという式が成り立ったところで、一気にエリオットとの距離が近づいた私は帰りの馬車で彼にこう切り出した。


「あ、そうだ。エリオット様、もしも愛人ができた時は遠慮なく言ってください。私はそういうの、気にしないので」


 勘違いを起こすというのは意外と疲れるものなのだ。

 たかが愛人ができたぐらいでこの疲労感に襲われるなんてたまったものではないと、先に宣言しておくことにした。


「ユリアンナとユタリアが同一人物と判明したからこそ言えることではあるが、私が愛人を囲うことは一生ない! 神に誓ってもいい!」

「いや別に神様に誓わなくても……」

「それじゃあダメなんだ。愛人がいるなんて勘違いされたら私は今度こそ死んでしまいそうになる」

「そんな大げさな」

「私がどれだけ悩んだか知らないから言えるんだ!」

 そんなに重要なことなのかしらね?

 まぁ、いい。そんなことよりも、距離が一歩でも前進した今、どうしてもエリオットに聞いておきたい、重要なことがある。

「エリオット様、実はお聞きしたいことがあるんですけど……」

「なんだ?」

「本を没収したのはなぜですか?」


 リーゼロット様はそのわけを知っているような様子だったが、エリオットに嫌われていたわけではないと分かったからには、その理由が私にはてんで見当もつかない。


「あー、えーと……その……」

「話せないというなら無理には聞きませんが」

「いや、話す。これ以上、すれ違うのは勘弁したいからな」


 すれ違うとは何のことだろうか?

 首を傾げる私の目の前で、エリオットは胸に手を当てて深呼吸を何度も繰り返す。


 そんなに勇気のいることなのかしら?

 まるで一世一代のプロポーズでもするかのようだ。いや、告白の方がいいかしら。どちらにしても今から告げられるのは愛の告白なんてロマンチックなものではないだろう。


 恥ずかしがるほどしょうもない理由なのか。だとしたら笑いを零さないように気を付けないと! ――なんて構えていた私に告げられた言葉は予想もしていなかったことだった。


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