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人間嫌いの英雄譚  作者: kei
第1章 最低の始まり
4/4

旅立ち

肩をおとしてうなだれる。

疲れた。

主に精神的に疲れた。

あまりにも展開がめまぐるしく変わるものだから、俺ってこんな性格だったかと自分が分からなくなりそうだ。


『あの~、お疲れのところ申し訳ないのですが、次の説明をしてもよろしいでしょうか?』


もう怒る気力もわかなくなった。

さっさと終わらせてあいつらに合流しよう。

そして、このストレスを浩介で発散するしかない。

そうしよう。


「あぁ、色々と思うことはあるけど、話を進めよう。それと畏まった言葉使いをしなくてもいいぞ。こちらも今更言葉は改めないから。」


『……うん、分かった♪じゃあ、説明を続けよう。』


やけに嬉しそうだな。

人と遊ぶのが好きと言っていたし、異世界でも身近な神なのかもしれないな。


『目的は滅亡に向かいつつある世界の救済。手段としてまず1つ目、こちらの世界で起きている魔獣の発生を止めてほしい。2つ目、他種族同士の友好関係を築いてほしい。以上かな。』


世界の救済で魔獣退治じゃなく、発生を止めろ?

おまけに他種族との友好関係の構築なんて、当事者同士の問題だ。自分達で出来そうな内容に聞こえるんだが。


「世界の滅亡を救って欲しいというのはわかる。でも、なんで異世界人にそんな事を頼むんだ?」


『理由はあるよ?まず、魔獣は倒してはいけない。倒してしまうとそれ以上に増えるし、厳密には倒せない。だから発生を止めて欲しい。友好関係に関しても、送った先で確かめた方がたぶん分かりやすいと思う。』


「神の力で何とか、は出来ないから呼んだんだろうけど、そのあたりは?」


『うん。それは、その世界の神はその世界に権能を使ってはならないというルールがあるからだね。』


「なら、神って何なんだ?」


『神はね、祭り上げられたものだよ。偉業をなした者が死後に、または大きな力を持ったものがその象徴として。その力で自由に世界に干渉できたら、それは神々の争いになるよ。だから、ルールとして干渉できない。だから、神は信者の祈りと供物を対価に他世界へ力を使うんだ。祈りは他世界の神への陳情書、供物はその対価だね。他世界の神に信者からの祈りの内容を見せて、こういう祈りがこれだけ届いたから、この供物でこういうことをさせて欲しいと、それを司る神にお願いするんだ。』


「お前、人と遊ぶのが好きなんじゃないのか?」


『うん。好きだよ?あ、そういうことか。別に権能や過度な干渉をしなければ、ルールに抵触しないから、そのあたりは神によるね。僕みたいに人と触れあう神もいるけど少数派かな。』


納得出来るような、誤魔化されているような。

とりあえず、そういうものとして受け入れるしかないか。

行くと決めたことだし。


『じゃあ、最後に世界を渡る前に僕の権能からいくつか能力を付与するね。こっちで選んでもいいけど、こういうのって自分で選びたいよね?』


何かゲームっぽい流れだが、確かにそういうものは自分で選びたい。

ちょっとワクワクしてきた。


『じゃあ、君に分かるように見せるから2つまで選べるよ。』


その言葉と共に頭の中にリストのようなものが浮かんでくる。



「さて、どれにするか……な…。」


★能力一覧★


・生物との意志疎通 (人型を除く)

・生物への意識共有 (人型を除く)

以上


「2つしかねぇ!?選ぶ余地ねぇ!?返せよ、俺のワクワクを返せ!」


『ごめんね?僕の権能からしか選べないからそれしかないんだ。それとは別に言語理解は付くから安心してね。』


「微塵も安心できる要素がない!?どうやって世界を救えと!?てか、お前何の神だよ!?神獣ってそのままの意味かよ!」


『あと、君の友人たちの説明はそれぞれ別の神に頼んだから能力は違うよ。』


「ねぇハズレなの?ハズレに当たったの?」


『じゃあ、そろそろ行ってもらうね?君に僕の加護がありますように~♪』


「いや、待て、自分の加護ならちゃんとしろよ、え、これで終わり?マジで!?やっぱり1発殴ら」


最後までふざけた犬耳神。

男か女か、何の神かもわからない。

そんな神に見送られ、視界が白く染まり遠くなっていくなかで、

あのふざけた神の顔は笑顔ではなく、まるで……


ーーーーーーーーーーーーー


『行ったかな?ねぇ、君はこの世界を好きになってくれるかな?そうじゃないと……ぐすっ……ごめん…こんなことしかできなくて。』







ようやくスタートラインです。

そして初の一人称

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