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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
今からが振り出し
98/313

終末

「なんでお前がここに…居るんだよ!」

「ヤヨイ先生は…ヤヨイ先生は何処ですか!」

「………」

「答える義理は無いってか…くそっ!」

即座に取り出したのは学園支給品の魔札。簡易的だが敵を足止めする程度の威力しかないため、役に立つ時は少ない。

そして、信じたくはないがヤヨイを越えてきたこの男に、果たしてこんな物が通用するのだろうか…。

「マスター…ここは、私がやります」

「駄目だ。俺もやらなきゃ気が収まらねぇ…」

「止めてください…ここは、私がやります」

「お前も俺が役立たずだって言うのかよ!俺だって…俺だってやらなきゃ気が収まらねぇんだ!」

「そんなことを言っているんじゃありませんっ!」

涙を流しながらハクリに訴えるルリ。

返す言葉が無くなったハクリとルリの間に、ペイスが地面を揺らすように着地する。

「…ッ!」

ふと、ペイスがルリの方を見る。

緑に染まったおぞましい目。ルリは引け気味になりそうになりながらも、戦闘態勢に入る。

ハクリは、ペイスの着地に伴う風に飛ばされ、壁に思いっきり打ち付けられた……。

「ま……た…俺は……」

限界に達した歯がゆさ。自分が憎い…何も出来ない自分が。視界の中ではペイスとルリが激しい戦闘を繰り広げているというのに、自分はこうして何も出来ないままのたれている。

ーー力が……欲しいーー

ーー誰にも負けないような力がーー

『…セッティング確認…(ダミー)を発動致します』

「……??」

ふと脳裏に流れた謎の言葉。自分の思い過ごしかは分からないが、今はそんなことを考えている暇はない。

「ル……リ…」

「くっ…なんて固さ……これじゃあ魔法が通らない…」

どんな魔法を使っても、ペイスは無傷で返してくる。それどころか、あの巨体では到底思えないほどの速さを誇っている。

ルリの戦いは、次第に回避を優先するようになっていた。

「ぬるい…痒い…」

「っ!きゃああ!」

回避に気を取られていたルリが、一瞬の隙を見て蹴りを腹部に入れられる。容赦のないペイスの一撃は、ルリの体をシェルターの方へと飛ばして行った。

「ルリっ!」

戦闘不能…。当たり前だ。ヤヨイでさえ敵わなかったのに、ルリにそれが務まる訳が無い…。そんな事……分かっていたじゃないか。

でも、俺には力がなくて…無力で非力で役立たずで、気づいていながらも何も出来ないこんな自分が……

ーー憎いーー

「ま、すたぁ……」

「………」

蹴られた腹部を抑えながら、ヨロヨロと立ち上がるルリ。ペイスは無言のまま近づいている。

俺に何が出来る?

何も出来ない俺に何が出来る?

魔法が使えない俺に何が出来る?

役立たずの俺に……何がーー

「てめぇぇえぇええぇえ!」

怒号混じりの叫び声、一気にペイスの元へ走り込むハクリ。ペイスとルリの間に入り、ギッと殺意の入った目でペイスを睨みつける。

「マスター…危ないです……そこからーー」

「これ以上ルリに手ぇ出してみろ…その間抜けな首根っこ引きちぎってやるからなっ!」

ルリの言葉など耳に入らず、ハクリは未だ挑発を繰り返す。

「……」

そんなハクリを気に止めることなく、巨体は徐々に…徐々に近づいてくる。

心臓の鼓動が早くなる。自分は死ぬかもしれない…でも、今の自分が出来る事といえばこんな事しかない……。

もろい盾の役が…自分にはピッタリだ。

「やめて…止めてください!」

「ごめんルリ…俺にはこんな事しか出来そうにない。力がない俺は…こうやって守る人の寿命をほんの少し延ばすことしか出来ないみたいだ……」

「止めてくださいっ!」

「だから…ごめんな…」

ペイスの拳が振り上げられ、ハクリの頭部めがけて振り下ろそうとされている。微笑んでいるハクリを見て、ルリは目を見開いた。

避ける動作をとる様子もないハクリは、微笑んだまま目を閉じる……。

嫌だ…。自分の大切な人が……死ぬなんて嫌だ!

ーーなら、全部嘘にしてしまえーー

「……っ!いやぁぁぁあっ!」

ーーようこそ嘘の世界へ…あなたにはこれから、追試対策を受けてもらいます…。止まった時間の世界で…存分にお楽しみ下さいーー

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