最後のーー
「着きましたわね……」
「ここが……」
イタチの先導により、避難用シェルターとやらに到着した。不気味な空気を醸し出しており、なぜだか嫌な予感がする。
「……どうやって入るんですの?」
「どこかにスイッチがある」
「……これですかね?」
なんの躊躇もなくルリがボタンを押す。
すると、閉じていたシェルターが開かれた。
「…入ろう」
「……あぁ」
まずハクリとルリがシェルターを潜る…。中は薄暗く、緑の霧のせいで窓から差し込む光はだいぶ遮られていた。
「…暗いな」
「はい。誰かがいても遠距離からは確認できませんね……」
「イタチとウェイリィもはやく入れーー」
イタチとウェイリィを呼ぼうと、振り返ると、シェルターが閉じられようとしていた。
「……」
「ウェイリィさん!何で入ってこないんですか!」
「ここから先はお2人でお入り下さい。私とイタチさんは少し遅れていきます…」
「お前の冗談は面白くねぇぞ!早く入れ!」
「…無理。敵、居るから」
こちらに振り向くイタチとウェイリィの背後……迫り来る大勢のゾンビ達が目に留まった。
「シェルターの中は安全だ!早く!」
「あの量でけしかけられたら、いくらシェルターとはいえ粉砕されてしまいますわ…ここは、私とイタチさんに任せて下さいまし」
何度ハクリとルリが訴えかけても、イタチとウェイリィは応えてくれない。それどころか、こちらに背を向けたのである。
「イタチ!ウェイリィ!」
「止めてください!早く!」
閉まり際…ハクリとルリは渾身の力で叫んだ……。
帰ってきたのは、『安心して』『大丈夫だから』という意味を込めた笑みだけだった。
シャッターの閉まる音。中にいた2人は同時に地に手をついた。
「嘘……だろ。皆…皆居なくなっちまった」
「皆さん……本当に大丈夫なんでしょうか」
元凶をヤヨイが、ゾンビの群れをミナヅキとイタチとウェイリィが……。
自分はこうも何も出来ないのか…。
地面を殴りつけても、襲ってくる痛みと虚無感はさらに罪悪感を増幅させる。
「…俺はまた……何も出来ないまま」
「マスター……ッ!」
ハクリに寄り添おうとしたルリだが、急に警戒態勢をとり、奥の方に視線を移す。
「……ルリ?」
それを見たハクリは不思議そうにルリを見るが、ルリは恐怖に染まった顔で1点を見つめていた。
「……」
そして、その存在を目に映していくうちに、ハクリの顔も徐々に青くなっていく。何せそいつは…ハクリとルリの視界の先に立っていたのだからーー
「終わりだ…痛みを…痛みを分けてやる」




