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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
今からが振り出し
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運命

第十八炎系魔法改(ジルイグニス)

転生したヤヨイが放ったのは、普通の第十八炎系魔法(ジルイグニス)が何倍もの威力と規模になったもの。

六つの魔法陣を同時に形成し、同時に放つ。数十発もの炎の弾丸が、ペイス目掛けて駆け抜ける。

「ふんっ!」

その弾丸を拳で打ち消すペイス。その拳からは煙が上がる。

第三十五聖系魔法改(アリルランテ)

余裕の隙を作る合間もなく、ヤヨイは指定した範囲内の対象に消費した魔力に比例したダメージを与える魔法を与える。

即座に再形成された六つの魔法陣。ヤヨイの人間離れし過ぎた脳内容量、改変速度を物語っていた。

自身の足元に魔法陣が形成されたのを確認し、ペイスは防御体制に入る。

膝を曲げ、自身を抱きしめるように腕を回す。

「……ふん!」

ペイスの掛け声とともに、おびただしい量のガスが漏れ出す。

即座にヤヨイは第三十五聖系魔法改(アリルランテ)を発動。普通の人間なら一秒くらっただけで死ぬ程度の魔力量を使う。

眩い光とともに、光の柱がペイスを囲む。

「ぐ、あぁぁぁあ…」

今まで何をしても無傷に等しかったペイスが、今は唸り声を上げている。

これは…勝てるかもしれない。

「神の元に付く天人に楯突いたこと…不覚に思うがいい…楽には殺さん」

持続的にダメージを与え、じわじわと嬲っていく。

「痛みこそ……痛みこそ…」

魔法陣の中でそんな事を呟いているペイス。

そんなぺイスを見て、ヤヨイは終わりだとでも言いたげに広げた手を握り始める。

「……じわじわと…この手が握られた時、貴様は完全に朽ち果てるだろう」

「があ゛ぁぁぁぁぁあ!」

痛み故の叫び声が鳴り響く。慈悲はないヤヨイは、一瞬の戸惑いもなく拳を作った。

その刹那、すさまじい爆発とともに、ペイスの姿が消え失せる。

完全消滅の四文字。残されたヤヨイは深いため息をこぼす。

…これからどうしたものか。結局この世界の住民と友好的な関係を築く事など無理だった。恐らくこの規模だ。生き残りは少ないだろう。そのための復旧作業もあり、結局の所外交関係など築けるわけがない……。

つまり、無駄だったのだ。

固有能力『転生』を解き、いつもの姿に戻るヤヨイ。酷い疲労感が体を襲い、妙に体が気怠い。

「…ふぅ。早くミナヅキ達の所へ向かわなければ……」

そう思いながら1歩踏み出す……はずだった。

「……え?」

何故か目の前に広がるのは地面。おかしい、自分は前に進んだはずだ。地面が目の前にあるなどありえるわけが無い。

立ち上がろうにも立ち上がれず、体に力が入らない。さらにはーー

「い、痛い……身体中が……」

体の芯から突き刺さるような痛み。抑えようがない痛みが突然襲いかかる。

「それが……痛みだ……」

「っ!?」

自分のすぐ横で聞こえた声。

ペイスが…朽ち果てたはずのペイスが、自分のすぐ側で自分を見下ろしていた。

「き、貴様…何故そこに……」

血を吐き捨てながらそう問いかける。見ると、ペイスの体には傷一つ入っていなかった。

「我が力、痛覚(ペインセンス)による効果だ。お前の攻撃など、俺にかかれば数秒で治る…それに、俺は痛みを受ける毎に強くなる存在…」

「ばかな……そんな馬鹿げた力が有り得るものか……っ!」

そう問いかけたヤヨイだが、そうでも無ければペイスのあの硬さを証明できるものご見当たらないことに気がつく。

「お前も時期…痛みの虜と化す…」

そう言い残し、ヤヨイに背を向けるペイス。ヤヨイもすかさず震える手で魔法陣を形成しようとするがーー

「くっ…何故だ……何故魔法が……」

段々と遠くなる意識の中に、今までの記憶が蘇る。

それが走馬灯だと悟った時には、ヤヨイの意識は深い永遠の闇へと飲まれていった……。

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