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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
今からが振り出し
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固有能力…その代償

各種族の中には、稀に固有的な力を持つものが生まれてくる場合がある。それらは危険視される事もあるが、時として魔族、過激派組織に対抗するために大いに活躍することも少なくはない。

大七種はそんな力を持った者達で基本成り立っている。

もちろん稀に出るくらいなので、誰しもが使える訳では無いし、そんなに多くいるわけでもない。人によって効果は変わるが、『極強化』『蘇生』『極回復』など、価値のある力ばかりである。

人はその力の名称を『固有能力』と呼ぶ。

そして、ミナヅキは今、その固有能力を発動し、ゾンビの群れに突っ込んでいた。

「あ゛ぁぁぁぁあっ!」

怒号混じりの叫び声と共に打ち上げられる鮮血達。ミナヅキの獣と化した牙や爪が、速さが、対象を引き裂き、駆逐していく。

【野生】と呼ばれるミナヅキの固有能力は、自身の潜在能力を本能のままに引き出す能力だ。身体能力を何十倍にも上げ、ただ対象を裂き殺すだけの道具にしてしまう。

「はぁ…はぁ…」

血で染まった服、腕、手を眺める。自分はまたあの時のように戻る事が出来るだろうか。

暴走してしまわないだろうか…。そんな不安が頭を過ぎる。

「……くっ!」

鋭い牙を噛み締め、跳躍。すぐ背後にゾンビ2体が接近しており、コンマ1秒反応が遅ければ捕まっていた。

しかし、予定通り。

野生化したミナヅキの耳や嗅覚は異常なまでに発達。もうミナヅキから逃げられる雑魚はいない。

「ぐっ…がぁぁあっ!」

二体のゾンビの肩に乗り、手、口で両方の頭を引きちぎる。

そして即座に跳躍。次なるまとめがけで急接近を図る。

「邪魔ぁっ!」

地面を蹴り、各ゾンビの横を通り過ぎる一瞬で急所に切れ込みを入れていく。速さに追いつけないゾンビ達は次々と鮮血を上げ、倒れていく。

意識が…遠くなっていく感覚に見舞われる。

幼い時に体験したあの時と…全く同じように…。

「はぁ……はぁ…このままじゃ…またーー」

体制を整えるために、ゾンビたちの手の届かない高所へと跳躍する。

頭を抑え、必死に抗う。野生の本能に打ち勝つために……。

「…くっ…まだ……まだダメ……」

ミナヅキが野生を発動したのは、人生で2回目である。忘れもしない幼い頃の1度目、突如発動した野生の固有能力をコントロールする事が出来ず、周りにいた動物達を血で染め上げてしまったあの記憶。

自我をなくし、ただ殺す事しか考えなくなる自分が怖くなった。殺している際もそれが変だと感じることは無く、ただ楽しみながら、笑いながら殺していたことをよく覚えている。

本能には……抗えなかった。

「……はぁ…はぁ……はぁ」

次第に息も整っていき、次なる手を打つ為に踏み込むミナヅキ。

心のコントロールを忘れなければ自我を失うことは無い…そんな浅知恵を胸に刻み込み、再度群れ目掛けて駆け抜けて行った。

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