予兆
「いやぁ…祭りの準備が進んでますねぇ。午後が楽しみです♪」
「ん。屋台もいっぱい出るみたい」
ウキウキと歩み進むルリとイタチは住宅街をテキトーに掻い潜っていく。
「……?」
「どうかした?」
とある横道を横切ったところで、ふとルリが足を止める。
ルリが見ているのは昼前というのに薄暗い路地裏の奥だ。イタチが見た時には何もなく、あるのはゴミが入った袋だけ。それなのに、ルリは未だ見入っているようだった。
「いえ、今何か変なものが見えたような気がして…」
「??何もない…」
「……気のせいだったのでしょうか」
「どんなもの?」
イタチがそう問いかけると、ルリは手をあごに添える。
「男の人だったような…でも普通の人には見えませんでした」
「??さっきからルリの言っていることは理解出来ない」
イタチが顔をしかめる。ルリ自身自分が何を言っているか分からないのは分かっているのだが、確かに見たのだ。
ーー周囲におぞましい色の気体を撒きながら姿を消した男の姿をーー
「…イタチさん?」
ふと額に当てられた小さな手、イタチが背伸びをしてまでルリのおでこに手を伸ばしていた。
「…熱があるの?」
「いえいえ!熱とかそういうのは全くないんですよ………ふふっ。多分勘違いですね。ささっ、次行きましょう!」
イタチのさり気ない心遣いに、ルリの脳内にあった疑問は流されてしまった。調子を取り戻したように先導するルリに、案内役であるはずのイタチは後に続いた。




