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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
今からが振り出し
81/313

「はぁ…はぁ……流石にきついな」

「まだまだですわ。これは初歩の初歩の魔法。これだけ時間をかけては中級魔法なんて夢のまた夢でしてよ」

結果だけ言うと、ウェイリィの教え方は非常に分かりやすかった。ハクリに足りないもの、欠けているもの…逆に長所を的確に述べながら順調にハクリの魔法技術は向上していった。限界が近いせいか、上達の速度は落ち始めているが……。

「次は風の初級魔法をいくつかやってみましょう。風魔法は他の属性魔法とは違い、応用が効く魔法です。使い方によれば妨害、殺傷、加護など多種多様に変換できます。もちろんそれらの魔法改変には脳内容量を使いますが、使いこなせば戦いを有利に進めることが出来ますわ……と、説明はこのくらいにして、早速実演してみせましょう」

そう言って目を閉じ、精神を集中するウェイリィ。白く美しい双翼が開かれ、神々しい光を帯びる。

「…第一風系魔法(ウィンドメイク)

ウェイリィが静かにそう呟いた後に、手上に形成された魔法陣から出たのは、小型の台風のようなもの。目で確認できる程度にホコリや塵を巻き込み、渦をまいている。

「…先程も言った通り、風は自分の意思でどうとでも改変できます。例えばこの風でーー」

しゅっとハクリの元へ作り上げた風の塊を投げる……そしてーー

「爆ぜなさい」

バンッと音を立てながらハクリの眼の前で爆発。即座に襲った風の威圧に、ハクリは腕で顔を守った。

「……こういう事にも使えます」

「……っ!?」

顔の側から腕を離し、目を開くと、先程まで数メートル先にいたウェイリィが、自分の懐に潜り込んでいた。

……一種の猫騙しのようなものだろう。非常に原始的かつ幼稚な方法だが、ウェイリィの言いたい事は理解出来た。

「……なるほど。こんな使い方がな…」

「これなら無理に中級魔法を覚えなくても、応用を効かせれば何とかなることもあります。無論、中級魔法と比べれば敵う筈がありませんが」

しばし悩むハクリ。出来ることなら中級魔法を会得してみたい。これから役に立ちたければ、自分がなるべく強くならなければならないからだ。

そんな思いを込めて悩む。

「実際にやってみしょう。これなら簡単でしょうし」

「……そうだな。まずはココからだ」

先ほどのウェイリィのように目を閉じ、精神を集中させる。心の中で先程の風を連想し、手上にイメージを集中。

「…手上には小型の風を…台風をイメージして下さい。そう…段々と……ゆっくり」

なるべく集中を切らせぬよう最低限の声でアドバイスを加えるウェイリィ。そのおかげでーー

「……っ!」

「出来た!」

ハクリの手上には、ウェイリィが先程生成したような風の塊があった。

ウェイリィのように応用をきかせるのはまだ先の話になるが、第一段階はクリアである。

「…出来ましたね。何で授業の時に出来なかったかが不信な程です」

「ウェイリィの教えが上手いからだよ。技術講師は自己満足なのが多いからな。こうやって教えてくれれば分かりやすい」

「そ、そうですか……」

赤面するウェイリィに気がつくことなく、ハクリは自分で作り上げた風を見入っていた。

また一つ、上達できた自分に驚きである。

今の時点でハクリが覚えた魔法は雷の初級魔法だけである。その他は今出来るようになった風の生成とまだまだ未熟の領域だが、今のハクリはこの上ない自身に満ち溢れている。もしかしたら中級魔法も夢ではない。

「…しかし、3時間でこの速さでは先が思いやられます…ルリさんにも手伝ってもらいましょうか……」

ウェイリィがそう呟くと、ハクリはこちらへ向き直る。生成した風を消滅させ、真面目な顔を顕にする。

「いや、ルリにはあまり頼りたくないんだ」

「……?どうしてですの?そうした方が効率良く魔法を覚えられますわよ?」

「い、いやぁ…あのさ……」

真面目な顔をしたと思えば今は何やら照れくさそうに頬を掻くハクリ。この反応にはウェイリィも困った顔をした。

「その…俺っていっつもルリに頼りっぱなしだからさ。今度は俺がルリの為にならないとなって思って…。だからこの時はルリに頼らないで魔法を覚えないとなって」

いつものハクリからは滅多に出ない言葉を聞いて、ウェイリィは一瞬時が止まった…どうしょうもない感情が込み上げ、最終的にーー

「何笑ってんだよ…」

声に出して笑っていた。

いつも自分に対してこんな顔をしないハクリが、今は子供のように照れている。その光景が何故かツボにはまってしまった。

「ふふっ。ごめんなさい。ハクリ君がそんな事を言うとは思ってもいなくて…ふふっ」

不機嫌そうな顔をするハクリ。流石に悪いと思い、目尻の涙を拭き取る。

「…ふぅ。醜態を晒してしまったお礼に私のとっておきをお教えいたしますわ」

「??それは俺にも出来る事なのか?」

「出来る出来ないかはハクリ君が自分で決める事でしてよ?」

挑発をするように提案をするウェイリィ。

ハクリはニヤッと不敵な笑みを浮かべ…

「……やってやろうじゃないか」

二人の特訓はまだまだ続く……

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