旧友の死
「…私に用かな?ハクリ」
「なんでかは知らねぇがとりあえず今は置いておく。ヒラト…。何でお前が会長なんて担ってるんだよ」
熊谷拓人。ハクリの同級生で、ハクリとは昔からの仲である。向こうではハクリが引き篭もっても何とか外に連れ出そうと試行錯誤してくれた大切な友人の1人だ。
でも、そのヒラトは…
「…お前、確か交通事故で死んだよな?」
「……」
なるべく口にしまいと思っていた事を放ったハクリ。リラン…もといヒラトは押し黙ったままハクリを見つめる。
「…なんの事かな?私はヒラトという名ではなく、リラン。君の知っている人物とは別だし、私はこの通り健全に生きているよ?」
「……そうかよ」
これ以上問いかけても無駄だと悟った。しかし、またこれでハッキリとした。
ーーここはあの世界とは別の何処かーー
そう決心づけられた事だけでも大きな報酬だ。今はヒラトの…リランの思うようにしておこう。
そう心に決めた。
「…それでは楽しい3日間を…ご協力感謝するよ。ハクリ」
「何を思っての俺いかは知らないけど、何か企んでるなら絶対に思い通りにはさせないからな」
そう言葉を残し、ハクリは部屋を後にする。
客人が居なくなった一室で、リランは不敵な笑みを保ち続ける。
「…思い通りになるさ。すべて僕の思い通りにーー」
不気味な笑みを声にだす。
その声は、この部屋の人物、リランを除いて誰の耳にも届かなかった。
 




