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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
今からが振り出し
73/313

到着

「…着いた」

「……やっぱり」

ハクリとイタチを除くメンバーがある建物を見つめて呆然とする。

予想的中と言ったところか、ハクリはその建物…市役所を見て試行錯誤を重ねる。

…この世界の長を務める人物がここにいるという事は、やはりこの世界は何者かによって創られた偽物の世界。

どんな意図で作られたかは様々だが、今はイタチが作ったと思っても過言ではないと思う。

「……ハクリ?」

難しい顔で思い悩むハクリを、心配そうに見るイタチ。

本気で自分を導こうとしている様な…どうしてもイタチを疑う事は出来ない。それに、自分には何も苦はない事から、今は更なる結論を出す事は避けた。

「悪い。今行くよ」

中学生くらいの時にいちど訪れた施設内は、やっぱり当時のままでどこか懐かしいものとなっている。そんな中、向かう先はイタチが先導することにより示してくれる。

「…何だか静かですね。本当に誰かいるんでしょうか?」

「まぁ大丈夫なんじゃないの?ハクリ君もいることだしさ」

ウェイリィの言葉は少々大袈裟に見えるかもしれないが、本人がこんなに言うくらい、市役所の中は静かだった。

前向きに見えたミナヅキでさえ、その表情に少しばかり不安がにじみ出ている。

「…ここ」

ものの数分歩いたと思えば、すぐ到着の知らせが来る。とある扉の前で立ち止まり、こちらへ振り返る。

「ここがこの世界の長とやらがいる部屋か…」

「なんか長かったね。何かお出迎えがあるといいなぁ」

ヤヨイ、ミナヅキが安堵の息を漏らす中、生徒陣は不安のせいで顔を強ばらせていた。

「…何だか緊張しますわ」

「え、えぇ。私こんなの久しぶりで…心臓飛び出しちゃいそうです」

「………」

それぞれが思い思いの心情を口にする中、ハクリただ1人は押し黙ったままだった。

この先でどんな事を伝えられるのか、ハクリは怖かったのである。

イタチの説明では一応種族の代表という事になっているものの、自分はそれ程までの役割をちゃんとこなしていけているのだろうか…もしかしたらこの世界の住人は、自分の事を恨んでいないだろうか…そんな不安事が頭を()ぎる。

「会長…お客人、代表…到着した」

数回のノックの(のち)、イタチが扉の向こうにいるであろう人物にそう伝える。そこで走る緊張の空気。余裕そうなヤヨイとミナヅキも切り替えたように真剣な眼差しをしていた。

「…どうぞ」

声質からして若いのか、年を重ねた重々しい声とは違い、どこかメリハリのある凛とした声だった。ちなみに男である。

「失礼します」

珍しく丁寧な仕草をとるヤヨイにも驚きだが、中に入って見た部屋の光景にも驚きを隠せなかった。

「いらっしゃい…あと、おかえり二人共。随分頑張ってたようだね」

広々と取られた間取り。周りに並べられた机椅子とは一際豪華な机に腰掛ける青年の周りには、10人の女性が立ち並ぶ。

「…この度はこちらにお招き頂き、ありがとうございます。我々が外世界の代表として馳せ参じた、天人族(ディバイアント)大六種のヤヨイ・イーリア、こちらがーー」

獣人族(ライガン)大六種のミナヅキ・ロッドギークです。以後、お見知りおきを」

ヤヨイ、ミナヅキの見事なまでに整った挨拶に、ウェイリィも続けて頭を下げる。

天人族(ディバイアント)のウェイリィ・エンフシストです」

「まぁそこまで畏まらなくても大丈夫ですよ。気軽に、気軽に行きましょう。そこにお休みください」

青年は自分の前に並ぶソファを指し、そう告げる。一同はなるがままに従い、ソファへと腰掛けた。

「……さて、イタチから話は聞いているかな?私が説明しなければならない内容はどこからだろうか?」

全員がソファに腰掛けたことを確認し、青年がイタチに問いかける。眠たげな表情のまま、イタチが答える。

「…この世界の事とか、会長の事とか……あと、何で連れてこられたかとか……だと思う

「ふむ。ならこの世界の事から話そうか。これを知らないと後々不便だからね」

目の前の青年は、こちらを見たまま、不敵な笑みでそう呟いた。

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