ミナヅキの得意事?
「おぉ…今日のご飯はきのこ料理に山菜の炒め物ですか…いかにもキャンプって感じですね!」
「ルリ君…これは遊びじゃないんだぞ?」
「まぁそう固いこと言わずにさ!はい、ヤヨイの分!」
目の前に差し出された香ばしい匂いを放つ料理に、今朝から何も食べていない一同の心は釘付けである。
それもいいかとため息をこぼし、口に運ぶ。
ほのかに香る調味料の香りが、キノコの風味を掻き立て、とてもそこら辺に生えているものとは思えない。
一言で表せば、美味しかった。
「しかし、お2人はお料理ができますのね…」
「え?料理?」
ウェイリィの何気ない問いかけに、ミナヅキはキョトンと首をかしげた。
何故かそれを見た途端、ヤヨイの手がピタリと止まり、顔を青ざめる。
「…ハクリ君。この料理は、一体誰が作ったんだい?」
「俺は料理とかあんまり上手く出来ないから、今日はミナヅキさんにお願いしましたけど……どうかしましたか?」
そしてハクリの言葉を聞き、ポロッと手から離れ、地に落ちたスプーン。その異常な反応に、一同はヤヨイに目を向ける。
「…ミナヅキ。お前、料理出来なかったよな…?」
当然の事ながらミナヅキ以外の全員が硬直。そしてミナヅキは…
「うん!だから適当に混ぜて適当に炒めただけだよ!」
「あほかっ!その適当はこっちの『テキトー』だろうが!前に私がお前の料理を食べて三日三晩寝込んだのを覚えていないのかっ!?」
ーーあ、これはやばいやつだーー
そう察した者達は、皆静かに料理の入った器を置き、その場から立ち去ろうとする。
「あの時は失敗しただけだもん!今回は上手くいって…って、何で皆どこか行くの?」
首をガタガタと小刻みに揺らしながら振り向いたハクリの顔は、気分でも悪いのか、徐々に青くなっていく。
「…ちょっとそこの川で顔を洗いに…」
「へぇ…じゃあまたその後にご飯食べようねっ!」
ーー殺す気かーー
誰もがそう思いながら、その場から逃げるように立ち去った。
残ったヤヨイは、逃げるタイミングを失い、戸惑うことしか出来ない。
地に落ちたスプーンを魔法で生成した水で洗い、差し出すミナヅキが、何故か悪魔のように見える。
「はい!まだ残りあるからどんどん食べてね!」
…ヤヨイの地獄はここからである。
 




