神の工作
「流石僕の作品だ…予想以上の出来前だよ…」
自作の戦闘用服に身を包んだ青年は、相変わらず薄暗い部屋の中で感嘆の声を上げる。目先に見える長身筋肉質の男を作品と呼び、呼ばれている大男は身動きが取れぬ様に鎖に繋がれている。
その不気味な光景を、カグツチは無言で見つめていた。
「これなら彼の試練…試験に丁度いい…ふふっ。ははははは!これだよ!ぼくが彼に乗り越えて欲しい試練はこれなんだ!」
魔法陣から形成されたキーボードの様なものを、狂った様に打ち続ける青年に応える様に、鎖に繋がれた大男は目覚め、もがき苦しむ。
「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁあ゛!!!」
「そうだ苦しめ!お前の強さはその痛み…痛覚!」
痛みが生きる証であり、痛みこそが生きる上での必須項目なのだと覚えこませる。
不要な感情を搔き消し、ただ痛みを求めるだけの狂人となる様にインプットを繰り返す。
そしてー
「…完成だ…これで君も…僕の忠実な【作品】だ」
嵐が去った後の様に静まり返る。一仕事終えた青年は疲労感を表情に表し、その場に膝をつく。
「マスター。お体に触ります。あまり無茶はなさらずに」
カグツチに肩を預け、再び立ち上がる青年の表情は、どこか青ざめていた。
「すまないカグツチ…全く、僕も貧弱になったものだな。これくらいの改造でこザマなんて、眠る前の僕が見たらなんて言うかな」
一つの傑作を作り上げたあとの優越感さえ、今の彼にとっては邪魔なものでしかない。傑作なんて今まで数え切れないくらい作り上げてきたし、中には最高傑作と自分で思えるものまであった。
【傑作】【最高傑作】と言う言葉を思い浮かべると、いつも頭を過る。
数多の作品を作ってきた彼が、唯一失敗したと思った存在…。
不覚にもそれは心を持ってしまったある1人の【人間】
それを思い出すたびに身体中から怒りが込み上げてくる。あの時の、まだ未熟だった頃の自分が起こした甘い考えが原因である。
「マスター?」
「…いや、何でもない。ありがとうカグツチ。もう大丈夫だ」
担いでもらっていた肩を離し、改めて目の前の傑作に目を向ける。自分から起動する事は出来ないため、命令を転送する形で動かす。
先程までの邪念を振り払い、命令を下す。
「さぁ、ひと暴れして来るんだ。対全種族反対主義型個体として!」




