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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
今からが振り出し
56/313

帰ってきたら

「そうですか…しばらく会えないとなると寂しいものですね」

気を落とすようにそう呟くシノア。

次の日すぐ、ハクリとルリは出発の事について報告するために教室へと訪れた。幸い午前の授業が終わり、昼休み時である。

「ハクリとルリちゃんに会えないのかぁ。ミャアちゃん寂しいなー」

「私達も暇じゃないわよ。報告しに行かなきゃならないんだもん」

「報告?何かやらかしたのか?」

何も知らないハクリは、周りが頷く話の内容についていけてなかった。呆れた顔をしながら、リリィが説明する。

「チームってのはそう親から喜ばれる仕事ではねぇんですよ。だからそれを報告…言い合いをしに行くです」

「まじか…そりゃ修羅場だな」

ある程度知っていたが、改めて聞くと凄い話である。まぁ親の気持ちもわからんでもないが、ハクリとしては自由にしてほしいとつくづく思う。

「ま、私達も頑張って説得してくるわよ。何年間か口聞いてもらえなくなると思うけどね…」

「胃が痛ぇです…」

周りが苦笑する中、リリィは青ざめた顔で腹部を抑える。余程嫌なのだろう。

「あ、そうか。リリィの家は確か―」

「そ、それ以上言わねぇでくだせぇ!」

ミルが思い出したように口に出した言葉を、リリィは全力でフォロー阻止する。そんなリリィを不思議に思うハクリであったが、それ以上は問い詰められなかった。

「ハクリ君、ルリ君。少しいいかな?」

資料を両手に抱えたヤヨイが、廊下からこちらを呼びかける。リリィの家の事は気になるが、それは後回しとなった。

「じゃ、ちょっと行ってくるよ。またこっちに帰ってきたらこの教室で」

「うん。気をつけて行ってらっしゃい!」

「お身体にお気を付けて」

「帰ったらミャアちゃんとデートしようねっ!」

「なっ、ミャン!それはダメよ!…気をつけて行ってきなさい……」

「皆さんも親御さんの説得頑張ってください!」

「……ん。まかせ…て」

「うぅ…ま、任せろです!」

クラスメイトから激励の言葉をもらい、やる気に満ちたハクリとルリであったが、内心心寂しい感情もある。やるせないが、今の自分達がすべき事、それを優先すべきだと、この仲間達が応援してくれたからそう思えた。

だから…踏み出せる。

「…じゃあ、行ってくる!」

大丈夫だと言わんばかりの満面の笑みを見せ、教室を後にする2人の背中を、名残惜しそうに見送った。

その背中を見る事が、 この先あるかどうかなんて……分からないのに…

「あーあ…行っちゃったね…」

「これで良かったのよ…あの2人には…私達の真実を聞けば辛いだろうから」

感情の入っていない笑みを浮かべながら放った一言は、それぞれの胸を締め付けるように、心の奥へ響いた。

ただ待つ事しか…無事に【試練】を乗り越えて帰ってくる事を祈る事しか…彼女達に許された自由は無かったのだ。

「さ、僕達も家に帰ろう。もしハクリ君が帰ってきた時は、いつもの日常に戻れるんだからさ!」

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