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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
今からが振り出し
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誘い出し…

新大陸に向けて出発する4日前。ハクリとルリは悩んでいた。それは非常に大切な事で、これが無いとまず失敗は確実だ。でも、それを見つける方法が分からない2人は、お互いに案を絞るが、どれも失敗続き。そうなれば落ち込むのは目に見えている。

……と、ここまで明かさずに語ってきたわけだが、結論的に何が見つからないかというと、ハクリの前に突如姿を表し、そして突如姿を消したっきり現れていない【イタチ】である。

ウェイリィの襲撃の時は颯爽と現れ、ハクリを助けてくれた訳だが、思えばそれっきり姿を見ていない。何処にいるのかも分からなければ、何をしているのかも分からない。早々とお手上げ宣言をせざる終えない状況に、2人は何度目かのため息をつく。

「見つかりませんねぇ。そのイタチちゃんって女の子」

「ウェイリィに襲われた時は格好よく助けてくれたんだがな…よくよく考えると姿現す時はいつも突然だからな…いつもどこにいるのかは無知だ…」

と、そこで前日の記憶を思い出す。散々な思い出だったが、そこにヒントがあるかと思ったからだ……そして、思った。

「…なぁルリ」

「はい?どうかしましたか?」

「俺を殺してくれ」

「ま、マスター…とうとう頭が―」

「いやちげぇよ。何も本気で殺さなくてもいいんだ。【殺そうと】してくれ」

ハクリの意図が見えないルリは、目を丸くする他なかった。いきなり自分を殺してくれだなんて頼む人は珍しい事この上ないからだ。

「い、いや…流石に理由も告げられずに手をかけるというのは…ちょっと」

「俺を殺そうとすれば多分イタチが来ると思ってな…」

「……あ、なる程。そういえばイタチちゃんはマスターを守るために居るって言ってましたっけ?」

話の意図が見え、納得の表情をとるルリ。

「でも、具体的にどうしたらいいんでしょうか?今の私は使えて中級ですし…」

「くそっ。なんだか気に触るな…。良いよ。とりあえず攻撃してくれれば」

不服そうな顔をするハクリ。既に魔法が使えるルリを恨めしく見る。そんなルリは中級魔法が使えるようになり、最近ご満悦だ。

早速やってみようという事になり、少し距離を開けて立ち会う2人。

自分からの要望とはいえ、魔法を食らうと痛いのは知っている。自然と呼吸と鼓動が早くなっていった。

「い、いきますよ…マスター!」

「お、おおぅ!こ、こいや!」

両者緊張で肩を震わせていた。中級魔法とはいえ、魔力の量を間違えれば、数日は動けなくなる。今のルリはそれを覚えたてな為、上手く使えるかは本人でも分からない。

……そりゃ震えるわな。

「ま、マスター!やっぱり止めましょうよ!」

「ば、バカ野郎!ここまで来て止めるなんざ出来ねぇよ!早く来い!」

と言いつつも足ががたがた震えているハクリを見て、ルリが魔法を撃つなんてことが出来るだろうか……いや出来ない。

「ま、ますたぁ〜。私無理ですぅ〜」

目尻に涙を浮かべ、ガチで泣き出すルリ。方や自分を痛めつけてくれと足をガタつかせながら求めてくるハクリ。しかも場所は中庭。周りに校舎がある中で行っているため、多種族の生徒達からはいい暇つぶしである。

「ええい!早くしろ!お願いします!」

「う、うぅ…」

腑に落ちないルリであったが、渋々ハクリに向けた手のひらから魔法陣を形成する。覚悟を決めたハクリは、足腰に力を入れ、腕を目前で交差させる。

戸惑いはあったものの、ハクリが望むのならやり遂げるのがルリの仕事だ…そして―

第十八炎系魔法(ジルイグニス)!」

手を銃の様に構え、指先から炎の塊を放つ中級魔法。それをハクリに向けて放つ。

「ちょ、そこは普通雷系魔法だろ!」

予想外の展開に、驚愕の表情を顕にするハクリ。痺れるのは覚悟していたが、熱いのが来るとは思っていなかった。ハクリとルリの間にはもちろん障害物など存在せず、炎の弾丸は真っ直ぐにハクリの元へと駆けていく。

そしてハクリに当たっt

「………」

予想的中と言った所だろうか、ハクリの元へと駆けて行った無数の火弾は、一人の少女の剣舞により切り裂かれ、消滅する。

……イタチが飛び出してきたのである。

「お、おいあの女の子…」

「…あぁ。第二炎系魔法(ギアフレイド)を剣で無効化しやがった……」

「てか、あの子あの2人に似てない?」

先程も言ったが、ハクリとルリ、イタチが位置している場所は、周りに校舎が囲まれている中庭で、授業がない生徒達には結構注目の的だったりする。

「…あの子は…」

「あいつは敵じゃない。とりあえず行くぞ。イタチ」

イタチの返答を聞く訳でもなく、大急ぎでイタチの手を引っ張り、この場を立ち去る。イタチの存在がバレるかもしれないので、あまりこの手は使いたくなかった。

「あ、マスター!待ってくださいよー!」

一時イタチをじっと見つめていたルリだったが、ハクリが急に立ち去ろうとしたのを機に、駆け出した。

向かう先は―

「ヤヨイせんせー!お願い!出てきてー!」

物凄い勢いと力で職員室の扉を叩くハクリ。

その理由は…

「あなたはハクリを攻撃した…つまり、敵」

「ち、違います!あれはマスターが私に攻撃しろと言ってきたんですよ!」

「マスター?ハクリはあなたのマスターなの?」

「ええいうるさいわお前ら!とりあえず落ち着け!頼むから落ち着いて―」

「うるさいぞ!職員室の扉を叩くな!まずは貴様が落ち着かんかっ!」

「や、ヤヨイせんせー!お願いします助けて下さい!こいつら今にも殺り合いそうな空気醸し出してるんですよ!」

泣きそうな顔をしながらヤヨイにすがり付くハクリに、ヤヨイは怒りを顕にして怒鳴り散らす。

「お前ら3人地下演習場に来い!話はそれからだ!」

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