そして…
ご報告、投稿が遅れてしまい、申し訳ありませんでした!
「ほう。それはまた急な話だな」
「俺もまだ混乱している最中です…それで、どうしますか?」
ハクリの問いかけにヤヨイは「うむ…」と顎を指で支える。今2人がいる部屋は、お馴染みの狭い個室だ。前日あった事を全てヤヨイに話し、これからの事を相談しに来たのである。
「…そうだな。ウェイリィの事は今度じっくりお礼をするとして…今回はそのイタチという彼女に賭けてみる価値はありそうだ」
「さっきも言ったように、なるべく周りには晒さない方が良さそうです。住民がいる可能性がありますから」
「ん?その口ぶりだと、君はそこに行ったことが無いのかい?君とルリ君の故郷だと受け取ったが―」
「あ、いえ、その…もう大分経つから人も増えたかなぁというニュアンスで…」
苦し紛れの言い訳が効いたのかは分からないが、「ふぅん」と興味なさげに聞いているヤヨイ。
「よし、決めた。当日は私とハクリ君、ルリ君、ミナヅキとウェイリィの5人でそのイタチという子の案内で新大陸へと向かう」
「そんな即興に決めて大丈夫なんですか?もしもの時があるかも知れないんですよ?」
「それは重々承知だ。でも上にも他の誰かにも相談出来ない以上これが1番いい案だと思ったからね」
ヤヨイの発言も納得出来ない訳ではない。出来ればクラスの皆は巻き込みたくないし、あまり知られたくないというイタチの事も尊重したい。……どこか不安に思ったのだが、やはりここは挑戦してみるしか無さそうだ……特に案ないし。
「……それもそうですね」
「随分と素直なんだな。君はもっと反対してくると思ったがね」
「クラスの皆を巻き込みたくはありませんし、ヤヨイ先生の言う通り今はこれが最善策なんだと思いましたから」
「ふふっ。君ならそう言ってくれると思っていたよ」
「ヤヨイ先生も唐突だよね。いくら卒業できる単位とってるからって、各自家に帰しちゃうなんてさ」
朝のホームルームが終わり、文句を言うわけではないが、どこか納得いかないユリがそう呟く。
「これを機に家族に報告して来なさいって事でしょうね…」
「あ、そうだった。僕チームに入るんだっけ…」
「ミャアちゃんは別にいいんだけどなー。学園の方が楽しいし」
「だめ…ちゃんと報告……しないと」
「うぅ…帰ったら半殺しに合うですよ…」
リリィのみが今にも死にそうな顔をしていたが、誰も気にせずに思い思いの感想を述べる。新大陸に向かうハクリとルリ以外は長期期間しか帰る暇がない自宅へと帰宅する期間が設けられた。本心で言えば皆ついて行きたいわけだが、ハクリの希望により断念した。心配をかけさせたくないと強い意志を向けられては反論できなかったのである。
「ふぅ。それにしてもハクリ君とルリちゃんは忙しいみたいだね」
ふと空席になっている2人の席に目線を移す。ヤヨイを含める新大陸に行くメンバーとの打ち合わせとやらで、しばらく授業には出てこないらしい。そんな2つの空席を見ているだけで、何故だか切なくなってくる。
「2人が居ないと寂しいものですね…」
「ふん。私はそんな事思ってないわよ」
と言いつつも、どこか本調子でないユリであった。
「…さて、ツンデレなユリは放って置いて、久しぶりにこのメンバーで遊ばない?」
「ちょ、ツンデレって私はそんな…分かったわ。遊びましょ」
「いいねぇ!ミャアちゃんも行く行く!ヒーちゃんも来るよね?」
「……うん。私も…行こうかな」
「皆さんが参加するなら私も行きます!」
「私も行くですよ!」
こんな風に時間が過ぎていく。ハクリとルリがいた時に比べれば多少盛り上がりが足りないところだが、彼女達はこんな時間が大好きだった。お互いが認め合い、互いに助け合い手を差し伸べる。いつまでもこんな日々が続けば良いのに…そう思わなかった者はここにはいない。
「ちょ、ミル!変なとこ触らないでひゃんっ!?」
「ほらほら…ここだよねぇ。ユリが敏感な所ってさぁ…」
「こりゃマズイですよ!R18ですよ!」
「ミルさん!そこまで!そこまでにして下さい!」
出会いがあれば別れがあるなんてよく言うけど…そんな事は必ずしも起こる訳では無い。特に自分たちの場合は。
ここにいる誰しもがそうなる未来を期待していた。
……そして―
「それでは今から新大陸へと向かう。皆の者準備はいいか!」
遂に始まったハクリとルリの故郷、もとい新大陸探索という項目で行われる、ハクリとルリに向けられた疑いの改善にも繋がるこの大仕事。準備に準備を重ねた2人は、静かに肝を据えた。
 




