If〜もしもの話〜乱入者
「dm25865-ajは対象の疑いを晴らすため、計画通りオブティーンへと案内するようです」
「あぁ…報告ありがとうカグツチ」
薄暗い部屋。青年は紅茶をたしなみながら天空からの空を眺める。全てが思惑通りに進むことは何て面白い事なのだろうか。
そう思っていた。
「しかし、ここまで細かいミスが起きるなんて思わなかったな。眠る前の僕ならこの世界全員の意思操作や記憶操作は容易いのに…何人か疑問を浮かべる人が出てしまうなんてね…訓練をやり直す必要がありそうだ…」
何を思い立ったのか、カップに残っていた紅茶を飲み干し、立ち上がる。相変わらずカグツチは青年の側で召使のように立っているだけだったが、反応するように目を開く。
「マスター。ご要望を」
「グライドを起動させてくれ。僕の訓練に使った後はオブティーンへ転送してくれ」
「…対象に接触させますか?」
「あぁ。彼や彼達には【試練】を乗り越えて貰わなくちゃね。その前に僕があらかた調整しておくつもりだけど」
「……かしこまりました。マスター」
そう言葉を残し、部屋を後にするカグツチを後ろから見送り、再び窓を眺める。
「…君は、こういう時どう乗り越えるんだい?」
誰に言ったわけでもない独り言は、空を切るように静まり返った部屋で、静かに響き渡った。
 




