拝啓僕達の処刑が決まりました
あの頃は若かった……若かっただけなんだ。
「起きなさい………起きなさいってば!」
「ぐふぅっ!」
ボディに衝撃が走り、狛李の意識は覚醒した。
重苦しい瞳を開けると、辺りは真っ暗………ではなく、至って普通の部屋だった。
無色無生地で包まれた白く単純な部屋。ベッドと机と椅子といった生活に必要な物を最小限集めたような部屋だった。
ふと違和感に襲われる。
「あら……ルリは……」
「ここに居ますよぉ!」
真横にいた。
「なぁ俺達どうなってんの?」
「ちょ、ちょっと!」
「そうですね〜こうやって縄に括りつけられている所を見ると、捕まったんじゃないですか?」
「ねぇってば!」
「そっか~俺達捕まったのか~ホントついてないよ―くぶふぅおっ!」
先程から狛李とルリの前に立っている少女に、本日二回目の蹴りを入れられる。
「いってぇなっ!なに?暴力ふらないと喋られないの!?何それとんだ迷惑な持病だなっ!」
「ちっ、違うわよ!私が何回呼んでも無視するからじゃない!」
金髪のセミロング。そして尖った耳。
間違いないエルフだ。
「はぁ……とりあえずこの縄解いてくれよ」
「そうですよ!私達が何かしましたか!?」
「したわよ」
彼女は、短々とそう言った。狛李とルリが心当たりが無さそうな顔をすると、少女は呆れた顔で口を開いた。
「あなた達、妖精族の森に居たんでしょ?」
「えりえ?何じゃそりゃ」
「マスターがいた世界で言う『エルフ』の事ですよ。実はこの世界ではマスターの言っている『エルフ』や『ヴァンパイア』なんかの言い方が違うんですよ」
狛李は「なるほど」と頷く。目の前の金髪少女は目に涙を浮かべていた。
「お、終わったの?」
「あ、あぁ。話し続けていいよ…………何かごめんな?」
金髪少女はぐすっぐすっと言いながら涙を拭い再度口を開く。
「あんた達、許可が無いと入ったらいけない所に入っちゃったのよ」
「へ?俺達が?」
「あっ…………」
何かを察したようにルリが声を漏らした。狛李はそれを見逃すことはなかった。
「ルリ。何か隠してるだろ」
「い。いやぁ〜何も無いですよ?」
目が泳いでいる所を見ると何か思い当たる節があるらしい。
「そういやお前『忘れてましたっ』とか言ってたよな!何かあるんだろ!言えよ!」
わざとらしくテヘペロみたいな顔をし、先程のルリの真似とでも言いたげに訴える狛李。
「そ、そんなキャピッとして言ってませんよ!ちょ、ちょっと場所が良かったから使わせてもらっただけですよ!文句ありますか!?」
「あ、こいつ言いやがった!雰囲気だけで立ち入り禁止の所に入った事を自白しやがった!」
「そう……あんた達の言い分は分かったわ…………」
そう言って金髪少女は狛李達に背を向ける。
そして懐から携帯のようなものを取り出して耳に当てる。
……携帯て。
「はい。話は終わりました……はい。分かりました」
耳に当てていた携帯のようなものが細かい粒子になって消えたと思ったらくるっと金髪少女がこちらに振り向く。
不安気な顔をする狛李とルリに、金髪少女はこう言った。
「あなた達、処刑が決まったから」
3話目となると、そこそこシナリオが進んでいく気がするのですが…私的に全然進んでない気がするのは気のせいでしょうか。