不安
「疾走のネクロマンサー」
この名前がついた頃には、シュベンは既に特攻班の長を務めていた。二つ名というものは、その者の格を表すものとなる。少なくともAIPでは重宝されていた。
「僕にこんな名前が合うのかな…」
「あぁ!少なくともお前にだけはピッタリだと思うぞ!」
かつての同輩エルスが、自信満々に笑いながらシュベンの肩を叩く。
エルスの励ましがありながらも、シュベンは2つの不安に駆られていた。
二つ名はその人物そのもの…例えでも何でもない自分自身なのだ…本当に自分に当てはまっているのかが自分で怪しい……
「疾走…か」
「自分でぱっとしなくても、俺達からしたらそうなんだから良いじゃないか……な?隊長」
エルスの「隊長」という言葉に、シュベンは再度言葉を飲む。
特攻班の隊長…これがこの組織でどれだけ上の立場に至るかを、シュベンは嫌になるほど知っている。だからこそ、それ故の不安で押しつぶされそうになっていた……
「とりあえずこれから任務だからよ。さっさと済ませちまおうぜ」
「……あぁ。分かった」
気が進まないシュベンを、エルスは引っ張ってくれる……そんな副隊長に、シュベンは依存しつつあった。




