瓜二つの存在
「…ここに来たが100年目…貴様の息の根を私が止めてやろう」
「あらあら…女性に対してその口のきき方は感心しないわよ?」
睨み合う二人…ローブを深くかぶったアカネがその間に立つ。
「ノーティス様…ここは私がーー」
「えぇ…よろしく頼むわ」
「我が幻影に惑うがいい」
アカネよりも一足早く仕掛けた牛若丸が、自身の武装技術を発動する。またしても鳴り響く笛の音に、ユアは咄嗟に耳を塞いだ。
「だめ!その人の笛の音はーー」
「…何のお遊戯会ですか?馬鹿にしてるんですか?」
ユアの心遣いも虚しく、アカネはただ平然と立ち、悠々とその音を聞き入れていた。
「…貴様ただの人間ではないな?」
「秘密は聞かないものよ…アカネ」
「御意に」
アカネが一気に牛若丸との距離を詰める。牛若丸も咄嗟のことで反応が遅れてしまった。
「っーー」
牛若丸との距離数センチ…アカネはそこに位置したところでバク転を披露…牛若丸の顎に蹴りを与えた。
いとも容易く宙に浮いた体を、アカネは着地した後に腹部にさらに蹴りを加え、後方へと蹴り飛ばした。
「がはっーー」
「まだ終わりませんよ?」
圧倒的速さ…第三者であるユアから見ても、アカネの人事を逸した行動は正確ではなかった。吹き飛ばされている最中の牛若丸に、アカネのかかと落としが炸裂し、牛若丸は地面に叩きつけられた。
「っ!」
受けた本人ですら何が起こったか分からない…気がつけば自分は地面に叩きつけられていた…。
「あなたごときがノーティス様に手を加えようなど…一兆年早いんですよ」
心地いい風が全員の肌を撫でる…それ故に、アカネの被っていたローブが取れてしまった…。
赤い髪…赤い瞳……まるで誰かと対照的に作った人形のような…彼女の名前は……【アカネ】
「……アオイ…さん?」
思わずユアがそう呟く…それほどにアカネという女性は、ユアの知るアオイと瓜二つだったのだ……




