If〜もしもの話〜ルリと切って落とされた幕 その3
「なぁ」
「何ですか?」
枯れそうな声でルリが答える。結局掃除は終わったものの、時間は一人でやる時の2倍はかかった気分である。そして今2人がいるのは学園の屋上。ゆうやけこやけの赤とんぼーー
「お前って何で俺のところに来たんだ?」
「え…」
ハクリの何気ない質問に、ルリは呆気に取られてしまった。そんなルリに気が付かず、ハクリは話を続ける。
「いや、あの日お前が来てから何となくここまで来たけどさ、実際ルリが俺の所に来た理由がまだ分からないというかさ…その…なんというか……」
「……そうですね。私がマスターを選んだのは……」
ルリはそこで言葉を詰まらせる。今のハクリに、この対応の意味は理解できない…いや、理解する時ではないという方が正しい。
「…私が……私が」
「……」
さすがのハクリも何かを察したようで、見つめていた夕焼けに背を向け、階段へと向かう。
「…まぁいいけどさ。俺は今のこの生活に満足してるし、何より俺を迎えに来てくれたお前に感謝してるしな」
「マスター…」
「さ、早くヤヨイ先生に謝りに行こうぜ。さっきの口論でまた壷割っちゃったのは上手く誤魔化してさ」
「……はい!」
夕焼けに照らされた雫。ルリは我が主の元へ駆け抜けていく。




