練習試合!
種族競技会一週間前。
「今日はDクラスと合同練習だ。皆準備しておくように」
「合同練習か……僕は嫌だなー」
「同じくですよ。ぜってぇなんか言われますぜ」
みんなのテンションは降下気味だった。
気持ちのわかるハクリはどうしたものかと頭を悩ませていた。
「ま、まぁ先生方も見てますし…もしもの時はおねぇ……ヤヨイ先生がどうにかしますよ…」
そう言っているシノアもどこか乗り気ではない。やはり『欠陥クラス』として見られるのが嫌なのだろう。詳しくいえば『欠陥クラス』だからバカにされたり蔑まれたりする事が怖いのだ。
「なによ。Dクラスくらい私達ならどうにかなるでしょ…作戦があるんだし」
自信満々にそう言いながら薄い胸を張るユリ。
「いや、作戦は使わねーよ?」
ハクリの言葉を聞いた途端、自信満々の顔は驚愕へと一変する。どうやら作戦をここでネタばらしする気満々だったらしい。
「へ!?なんで!?」
「いやだって当日のために練ってきた作戦をここで使ったらバレちまうだろ?作戦は本番までとっておくんだよ」
「そ、それじゃあ今日はどうするのよ!ま、まさか無様に負けろっての!?そんな事したら私達一層バカにされるわよ!?」
「あと一週間もすればその連中達にぎゃふんと言わせる事が出来るんだ……我慢するしかないだろ…」
ユリは「そんな……」と肩を落とした。床に手をついてうなだれている。
「まぁまぁユリちゃん。ハクリだってこんな事望んでないんだしさ…ここは当日まで我慢しようよ」
ミャンのさりげないフォローが、ユリの心を楽にした。ユリは「そうね……」と目尻の涙を拭う。
「……しかしまぁ何もせず終いってのも尺だよなぁ……なぁルリ?」
横に並んでいるルリに不敵な笑みを浮かべながらそう問いかける。
「そうですねぇ……マスター」
それに応えるようにルリもまた不敵な笑みで返した。
「ったく…何で俺達が欠陥クラスと合同練習なんてしなくちゃいけねーんだよ…」
「全くだ……無駄な時間としか言えないな…」
「さっさと終えて自主練の時間に当てようぜ」
見事な罵声っぷりである。しかしこれもハクリの予想範囲のうちだった。
むしろ前いた世界の方が酷かったくらいである。
いつもの教室の空気とは違い、ハクリのクラスメイト達は皆もじもじとしていた。
「……お前達がそんなんでどうすんだよ。これじゃ本番でも負けちまうぞ」
「分かってはいるのですが…どうも普通には出来なくて……私達の悪口をまた言われるんじゃないかと思ってしまうんです」
「うぅ…こ、怖くなんかないです…よぉ…」
「こ、怖くなんかないわよ!本当だからねっ!」
ユリのツンデレの王道口調みたいなのは放っておいて。
「まぁなんだ。ビビるなとは言わないけど、慣れていくことはしようぜ。どうせ競技会が終わった頃には皆俺達を見直してんだからさ。その時の予行練習って思えば気が楽だろ?」
「各チームのリーダーは集まるように!ルールを説明する!」
「あーまじか…ルリ。皆に今日の作戦の説明しててくれ」
そう言い残して指定された場所へと駆けていくハクリ。最後に言い残した『作戦』という言葉にルリ以外の全員が意識を向けた。
「作戦があるの?今朝は無いって言ってたのに?」
物珍しそうに問いかけるユリ。ルリは満面の笑みでこう言った。
「はい!作戦というのはですね―」
「……それでは種族競技会予行練習を始める。制限時間30分以内に敵団旗を破壊、もしくは強奪したチームの勝利とする……始め!」




