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If.七種目の召喚者(イレギュラー)  作者: 石原レノ
始まりNew World
3/313

拝啓異世界にやって来ました僕ですが、早速限界です

「う……ん?」

目を開けた……と言うよりは目が覚めた感覚だ。日差しをもろに目にくらい、頭痛がする。

「あっ……」

先ほどの出来事を思い出し、勢いよく体を起こす。

周りを見ると、見知らぬ茂みや木々が狛李(はくり)を囲っていた。

狛李が住む街にこのような森はない。なぜなら狛李が住んでいるところは都会だったからだ。田舎ならまだしもビルが立ち並んだ都会にこのような森は滅多に見られない。

「……何処だここ……ん?」

手元に何かが当たり、目線を向けると、先ほどパソコンの画面から出てきた少女が口を開けて気絶していた。

挿絵(By みてみん)

「お前あの時の……」

よくあるラブコメの様な言葉が出てしまう。

先程みた謎の少女……これを見たという事は先程の出来事は夢でも幻でも無いのだろうか。そんな考えが頭を()ぎる。

「うぅ……ハンバーグがぁ…ハンバーグがぁぁあ…………はっ!」

目をぱちっと開き、ガバッと起き上がる少女。ぼーっとしながら狛李を見つめること十数秒……。

「ようこそ異世界へ!マスター!」

「いや気絶してたよな。今完全にハンバーグの夢見てたよな!」

素早いツッコミを入れ、現状確認へと移る。

「第一そんな事簡単に信じられるかよ…」

「まぁ仕方ないでしょう。こんな事信じろと言っても信じ難い事ですしね!」

何故か自慢げに話す少女。狛李は思わず口を開く。

「じゃあ聞くけど。ここ何処?それと君は誰?そしてさっきのは何だ?」

「おやおやぁ?随分とせっかちなマスターですねぇ。そうですね、そんなマスターにお教えしましょう!」

そこでこほんと咳払いをする少女。

狛李は現実的な話だと思いながら聞いていた。

「私は先程マスターが購入した『人工知能投入型アンドロイド』のルリと申します。それで、この世界はマスターが元いた世界とは全くの別世界『クロトロル』。他種族が交流しながら暮らす世界です!そして先程のはこの世界に行くための道筋とでも言いましょうか」

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………は?」

十数秒に及ぶ間を開けて、狛李は間抜けな反応をする。

てっきりここは田舎で狛李は誘拐または番組の特番にでも掛かったかと思っていたのだが…………これも十分非現実的ではあるが。

それにしてもこのルリとか言う少女の事はぶっ飛びすぎている。

「その反応。信じてないですね?」

「あったり前だ!流石に引き篭もり歴2年の俺でもそれくらいの現状判断はできるわっ!もしお前が言うこの世界が俺のいたであろう世界とは別物ってんなら証拠の一つでも見せろやっ!」

と、言ったところでルリはニヤァっと不敵な笑みを浮かべる。狛李は多少嫌な予感がしたものの、表情は崩さなかった。

「では見せてあげましょう!こちらへ!」

唐突に狛李の手を掴み、引っ張りながら走るルリ。

「お、おい……どこに連れて行くんだよ」

「今からマスターに証拠を見てもらうんですよ!」

ルリに半ば無理やり連れて行かれ、森を抜ける。絶対に騙されまいと思いながら嫌々連れ回された狛李だったが…………

「何だこれ…………」

目の前に広がる光景に絶句した。

森を抜けた先は中世を連想させる建物。そこを行き交う亜人達。

獣人もいれば竜人の様な者。天使のような白い羽を持つ者やエルフのように耳の尖った者。更には黒い翼に牙を兼ね備えた吸血鬼の様な者達が街に栄えていた。

「さぁこれが証拠ですよ!信じてくれました?」

これを見て狛李は言葉を失った。

ルリの言う『信じてもらう証拠』は出来すぎていた。

被り物にしては出来すぎているし、何より自分の目の前で魔法の(たぐい)が盛んに使われている所を見ると、疑いようがない。

つまり、信じるしかないのだ。

衝撃的な光景に絶句したままの俺を見て、ルリはニヤニヤとしていた。

「信じてくれましたか?マスター!」

そう。俺の物語は始まったばかりなのだ。

俺はこの新しい世界で新たな1歩を歩もう。何故なら…………何故なら…………って

「んなわけあるかぁあああ!」

「ひぇっ!?ど、どうしたんですかマスター」

「信じられるかっ!何がどうなってこの現状を受け止めろってんだよ!ま、まぁ何だ?百歩譲ってあの魔法の類が本物だとしよう………お前が俺をここに連れてきた意味は何だ!」

「魔法を信じた時点でもう9割型信じているじゃないですか…………まぁ良いでしょう!そこまで気になるのでしたらお教えしようじゃあ無いですか!」

そこでルリは一間置き、軽く深呼吸をした(のち)、再度口を開いた……

「私は―」

「何者だ貴様たち!」

開いたと思われた口から出た言葉は複数の鎧を着た謎の人たちによってかき消された。

「エルフの聖領に近づく不届き者め。見たところ腕に紋章が無いようだがどこの種族の者か!」

「お、おいそこのルリとやら。何か俺達やばい状況に陥ってないか?」

「そ、そうですねマスター。私もうっかりしてました」

「おい……その口ぶりはまさかとは思うが…」

恐る恐る狛李がルリに問いかけると

「忘れてましたっ」

テヘッと無邪気な笑みを浮かべるルリを見て狛李は無性にイラッとした。

「お前達には判断所で的確な判決を言い渡す。付いてきてもらうぞ」

「おいおいおいおい!マジでやばいじゃんか!」

「ほ、ホントですねぇあはははは……」

先程までイキイキしていたルリも今となっては戸惑っているようだった。ちなみに狛李は久しぶりの日光と大人数によって意識が飛んでしまいそうになる。

「あ……こりゃダメだ…………」

再び狛李の視界は暗く染まっていったのだった。

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