アカネ
「よろしいのですか?」
「えぇ構わないわ」
ノーティスは、いつも彼女のそばに居るローブを被った人形【アカネ】に許可を下す。今彼女の目の前にいるのは、特攻班の者達だ。なぜ狙われているかは、彼女が1番知っている。
「全く…レディの秘密事はあんまり詮索するものじゃないわよ?」
「お前の目論みも全て総司令が認知している。諦めてここで消されるんだな」
「そうはさせませんよ。主の為とあれば私は全力であなた達を阻止させてもらいます」
アカネが魔法陣を経由し、自らの武器を手にする。右手に小太刀を、左手にはハンドガン。あまり見ない戦闘スタイルに、特攻班員は目を疑った。
「そんなちんけな武器でこの数相手に出来ると思ってるのか?」
「えぇ…少なくともちんけなあなた達には得策だと思いますよ?」
「……」
瞬間、全員が苛立ちを覚えた。特攻班のメンバーが武器を手に取り、今にもアカネに向けて襲いかかろうとしている。
「あまりやり過ぎないで…私の魔力も無限大って訳じゃないし」
「御意に…安心して下さい。次主が魔力を使うのは、この武器を再び転送する時です」
「ぬかせこのアマァ!」
全員が前方から襲いかかる。アカネは両の手に待った武器を構え、ギリギリまで敵を引き付けた。
「うるぁ!」
「…」
敵の第一撃目は斧を持った男からだった。馬鹿みたいに大きく振りかぶった敵の懐に、一瞬で切込みを入れる。次に来た2人の敵はその男を盾にしながらハンドガンを眉間目掛けて放ち、盾にした男を蹴り飛ばす事で相手の足場を一瞬止めただけでその軍勢の半分をいとも容易く絶命させた。
たかが数秒だけで、たった一人の女に半数もの班員が殺された。その現実を受け止めるまでに十数秒…そして、それにより足を止めたものが再び殺されるまでに数秒……
あっという間に残った班員は数人になってしまった。
「……終わりですか?」
「う、嘘だろ…女相手に俺達が……」
「戯言は寝てからいうものですよ」
「アカネ。それを言うなら寝言は寝て言えよ」
「…………だそうです」
恥ずかしそうに頬を赤くするアカネ。不意に吹いた風によって被っていたローブがなびき、隠れていたうちの顔が顕になる。それを目の当たりにした生き残りの一人がハッとしたように口を開いた。
「お前、誰かに似てると思ったら…あ、アオーー」
それ以上、言葉が出ることはなかった。アカネの銃弾が喉を貫き、抵抗することも出来ずに死に至る……。
「………あなた達にあるのは【死】。我が主には【生の権利】を」
その刻…たった数十秒で特攻班員十数名が命を落とした。




