過剰な殺意
「怪我をしてしまえばお前に勝ち目はないな。俺の勝ちだ…」
「っ…」
ガリヤに刻まれた腹部の切り傷。ガリヤの能力は過剰殺戮。攻撃を与えた対象が弱っていればいるほどダメージは強くなるというものだ。つまり、怪我をしている今のアオイは、1体1で戦っている以上ガリヤの力を上げているに過ぎないという事である。
今は傷もダメージもそこまでないが、無理をすれば傷が開き、じりじりと動きは鈍っていく…。更に言えば、ガリヤは同班のサポートを受けている…。絶体絶命とはこの事を言うのだろうか…
その場で立ち上がったアオイ。小太刀を塚に戻し、大剣として扱う。グリップに備えられた引き金に指を添え、刃先に紛れた銃口をガリヤに向けた。
「勝負は最後まで…私もまだまだ本気ではありませんから……覚悟はいいですか?」
アオイの言葉はガリヤの頬を引きつらせる…しかし、すぐに薄く笑みを浮かべた。
「覚悟を決めんのはお前なんだよ。追い込まれてるのがどっちかまだ分からないようだな」
「…………」
言葉を返さず、ただ真っ直ぐにガリヤを見つめるアオイ。自分の言葉を訂正するつもりはないようだ…。ガリヤが鼻を鳴らし大剣を構える。
「なら分からせてやる!これがお前の最後だってなぁ!」
急速で接近してくるガリヤ。アオイはそのまま引き金を引き、銃弾を放つ。
「おせぇ!」
ガリヤはそれをいとも容易く真っ二つにして見せた。しかし、再び目線を戻すと、アオイの姿が見えない。一瞬ガリヤが戸惑いを見せる…その一瞬の間に、アオイがガリヤの懐に侵入してきた。
「っ!」
気配で気づいたガリヤは、その本能から無意識に大剣を振り下ろした。
アオイはそれを、体ごと回転させることでかわし、その勢いで大剣を横腹に当てつけた。
「ぐふっ!」
自分の体から鈍い音が鳴り響く。あばらの骨が何本かやられたのだと実感する頃には、アオイの次の攻撃が迫ってきていた。
「……くそがっ!」
ガリヤは自分の顔めがけて迫ってくるアオイの足を腕で受け止める。アオイもそれ以上追加攻撃をすることは無く、武器とともに後方へと跳躍、ガリヤとの距離を開けた。
鈍い痛みが走る横腹を抑える。いらだちを覚えた顔つきでアオイを睨みつけると、そこにはなんの躊躇もない、余裕とでも言いたげな無表情でいるアオイがそこにいた。
「まだこんな力があるとはな…」
「言ったでしょう?覚悟はいいですか……と」
「……なるほどな。よく分かったぞ…」
再び大剣を手に取るガリヤ。少しでも余裕だと勘違いした自分が馬鹿だった……こいつはこんな簡単に勝てる相手ではない…
「お前は容赦なくいたぶってやる!この俺が満足するまでなぁ!」




