内心
「……ねぇニノ君」
「……なんだよ」
「ニノ君は何で私の事を信じてくれたの?」
小さな廃墟の街を歩み進めるうちに、ユアがそんな事を問いかけた。ニノはあの戦闘以来どこか抜けたような顔をしている…。1番大きいのはシルフの存在だろう。
「分かんねぇ。何か誰かにそうしろって言われたような気がして……でも、誰かは分からない」
「そう…覚えてないんだ」
「お前知ってるのか!?俺にこんな事伝えた奴のこと!」
「……うん。しってるよ」
「誰なんだよ!思い出そうとしても思い出せない!何か大切な人だったような気がして…俺は……あいつらを失って…大切な人まで忘れちまったんじゃないかと……」
「…………」
ユアがニノを視界から外す。その先にはシルフがこちらをじっと見つめていた。どうやらニノには見えていないようだ……。
視線で「これでいいのか」と語りかける。
シルフは目を瞑り、首を横に振った……。
「…君は忘れちゃったんじゃないよ。今は思い出せないだけ」
「なんだよそれ……」
「大丈夫。きっと思い出せるから…」
「…………」
歯がゆい顔をしながら苛立ちを露わにするニノを見て、ユアはもどかしい感情に見舞われた。
出来る事なら教えてあげたい……でも、シルフの顔を見てそんな事をしようとは到底決心できないユアだった。




