隠蔽の神獣
「ほらほら!そんなんじゃ僕のおもちゃから逃げられないよ!」
死者の大群はシルフ目掛けて一気に襲いかかってくる。唯一統率性の取れた行動と言えるそれは、シルフにとってはかなりきついものだった。周りは廃墟。まくことも出来ず、反撃は難しい場所…。シルフの出来ることは限られていたのだ。しかし、それを今したところで、敗北を先延ばしになるだけである…何か強力な一撃が与えられる武器か何かがあればーー
「君の力ってそんなもの?期待外れはさっきだけにして欲しいな」
シュベンの言葉で、先程の殺戮を思い返す。咄嗟にニノだけを庇ってしまった時便が憎い…。ロストセンスオアマインドはそんなに多くの存在は隠せない。それに、使い方を間違えると完全に消してしまうかも知れないのだ。だからニノしか守れなかった……
「…もう失うのは嫌なんだ」
「口ではどうとでも言えるさ。僕が求めるのは君が今しているような逃避じゃないよ」
「分かってるさ……だからもう逃げないと誓うんだ」
シルフが瞳を閉じる……瞬間ニノは何か不吉な予感を察知した。こちらからは後ろ姿しか見えないが、シルフは何か大きな事をしようとしている…そんな気がした。
「ニノ…お前は気付いてないかも知れないけどよ……俺とお前ってずっと一緒だったんだぜ?お前がお嬢様だった時からずっとーー」
シルフの足元に巨大な魔法陣が形成される。純白な魔法陣には大容量の文字と詠唱が刻まれていき……シルフが光に包まれる。
「やっと姿を見せてくれるんだね…神獣シルフェスト!」
「姿を見せるのは即ちお前の死を意味する。俺にここまでさせたんだ。そのくらいの報いは受けろ」
「報いを受けるつもりはないさ。死ぬのは君の方だよ」
「……まぁいい。言葉よりも行動……だろ?」
「そうだね……楽しませてよ」
眩い光は徐々に収まり、白い翼を持つ獅子が姿を見せた。
「それが君の姿なんだね」
「ニノは小さい頃動物が好きでな。女の子のくせにライオンが好きだったんだよ」
「どこまでも忠実な獣だ。同情するよ」
「…お前はこの世界に一欠片も残さん。我が存在の力…報いを受けるがいい!」




