作戦会議!
「さぁ!チーム結成を記念してチーム名を決めるわよ!」
「お、おぉ……なんかテンション高いねユリ…どうかしたの?」
次の日、ヤヨイが不在のため、午前中は自由時間となった。それはハクリとルリの運命がかかっている『種族競技会』が近いため、ヤヨイが計った事だろう。
『教師は忙しいんだよ』だそうだ。
「私は全力でハクリをサポートして未来に役立てるのよ!ハクリをね!」
「おい、それ一方的に便りっきりってニュアンスにしか聞こえねーぞ!」
「でも皆さんが参加して下さって私も落ち着きます……もしかしたら私とミャンさんだけかなぁって思ったりもしたんですよ?」
「大丈夫だってシノア。僕も最初は戸惑ったんだし…よくよく考えたらこんなに美味しい話はないしね」
「……まぁなんだ……その、ありがとうな…俺とルリの為に協力してもらって」
「ありがとうございます皆さん。私とマスターの為に…」
ルリは深々と頭を下げ、ハクリは申し訳なさそうな顔でそう告げる。周りの人物達は優しく見守った。
「良いんだよ。僕達だって自分のためにやった所もあるんだからさ……それより、勝たなきゃ意味が無いだろ?早く決めること決めちゃおうよ」
ハクリは「よし」と言って黒板の前に立つ。ここから見ると全員の顔が見えるからだ。ルリを横に立たせて、ハクリは口を開いた。
「えーっと…俺がリーダーってのも何か変な話だし多分統率力ないから……リーダーはルリって事で―」
「却下」
「僕も却下ー」
「んなこたぁ許されませんよ!」
「私も賛成しかねます」
「リーダーはハクリがいい!」
「…………却下」
ハクリはこれでも考えたつもりなのだが、この案件は早々と却下された。
「いやだって言ったろ?俺は統率力もないし利点もない…だから俺がリーダーってのは―」
「マスター」
ハクリの目先に座る少女達に訴えている所でルリがハクリに呼びかける。ハクリがルリの表情を見ると、ルリは笑っていた。
「皆マスターがリーダーの方が良いんですよ。大丈夫です。サポートは私に任せておいて下さい!マスターはただ思った事をすれば良いんですよ!」
満面の笑みでそう言われ、ハクリは言葉を失う。こう言われてはもう言い返せない。
「……じゃあ俺がリーダーで……よろしくお願いします……」
ハクリに浴びせられた拍手も今は照れくさくて見ることが出来なかった。
軽く咳払いをして、次の話題を出す。
「次はチーム名だな……俺ネーミングセンスないからなぁ…これは流石に皆に聞くことにするよ。何か案ある人いる?」
ハクリがそう問いかけたと同時に長い沈黙が教室を襲う。
「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………そろそろないかな?」
「幻楽団」
「どこの上海アリスだよ……次」
「Zチーム」
「どこの龍の玉だよ……次」
「ハクリブラザーズ」
「きのこは食わんし関連がなさすぎる……次」
「メカクシ―」
「さっきからパクリしかねぇのかよ!もうちょっと絞れ!パクリは禁止!」
っつーか何で俺の世界のアニメやらを知ってんだよ。
「だって浮かばないもーん。ハクリのチームなんだしハクリが決めれば良いじゃん」
面倒くさそうな顔をしてそう言うミャン。どうやら皆ミャンの意見に賛成らしい。皆してハクリを見る。
「…………漆黒の竜騎士達」
「「「「「「「却下」」」」」」」
ハクリ以外の重なった却下の声。相変わらず自分のネーミングセンスには心が痛む。
「……ほら見ろ!こうなるから嫌だったんだ!」
「だってハクリ、ネーミングセンスなさすぎるんだもん……私びっくりしちゃったし」
「だから無いって最初に言ったじゃないか……それなのに…それなのに決めろって言うから……」
「ま、マスター泣かないで下さいよ……えーと…んーと……あ!」
ハクリを慰めるルリ。なにか思いついたように表情を明るくした。
ハクリを含めるクラス全員がルリに視線を向ける中、ルリは自信満々にこう言った。
「フェアリーテイルなんてどうでしょう!」
「やめろぉ!それは流石にまずいって!」
「妖精に尻尾はあるのか気になりませんか?そんな気になる事を求めて冒険するという意味で―」
「やめろっちゅうに!お前それ以上その事について語るんだったらチョップ喰らわすからな!」
「えー……そんなぁ…」
口を尖らせてふてくされた顔をするルリを何とか止めたハクリは、気を取り直して教団の前に立った。
「これ以上やっても埒が明かないから、チーム名の話はまた今度にしよう……」
「って事は……競技会の作戦かな?」
ミルがそう言うとハクリはこくんと頷いた。
「競技は確か陣取りゲームだったっけか?」
「はい。両チームの陣地に設置された団旗を破壊、奪えばそのチームの勝ちです。攻撃、抵抗も許可された、ほぼほぼサバイバルゲームといったところですかね」
シノアの簡単な内容説明が終わると、ハクリは事前に渡された資料を片手に、チョークで黒板に戦場の見取り図を書いた。
「……こんなかんじかな」
「何でそんなもの書くの?」
ユリが不思議そうに問いかける。ハクリは「ふっ」と自信満々な顔でこう答えた。
「今から戦術を教える」
「……とまぁこんな感じだ……。重要なのはみんなの連携だから、誰かひとりがミスったら全部パーだ」
ハクリが入念に話した戦術を聞いて、クラス一同困惑していた。
「……えーっと。僕は本当にこれだけでいいの?」
ミルが不安げに問いかけてくる。
「もちろん。むしろこれがちょろいってんならミルはチート使いだから」
「陣を守るのが本当に私とリリィさんだけでいいのでしょうか?」
「あぁ。問題ない。責められた時の作戦はさっき言った通りだ」
「で、でも何で私がこんな恥ずかしい事しなきゃいけねぇんですか!」
恥じらいで顔を赤く染めたリリィがそう訴える。この質問にもハクリは表情を崩さずに答える。
「リリィの容姿がぴったりだから」
「あーもうっ!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!何で私こんな事しなくちゃいけないの!?なんか私だけ結構きついことやらされてる気がするんだけど!」
「言ってしまえばユリがこれをしないと作戦は始まらないからな?」
ユリは顔を真っ赤にして言葉を詰まらせた。
多分やることはユリが一番恥ずかしい。
「んー。私の予想だと多分これうまくハマれば簡単に崩せると思うんだよねぇ。楽しそうだし私は賛成!」
「……よし。なら後は実践あるのみだな。ミルとリリィとシノアは連携の練習。ミャンとヒノンは各自必要に応じて『アレ』を極めておいてくれ。ユリとルリは俺と練習な」
「はーい!マスター!」
「うぅ…覚えてなさいよハクリ…」
そしてハクリのクラス全員は各自練習に向かった。




