理想と現実
「当たらない攻撃はそれで終わりですか?」
「くそっ……てめぇ!」
今やアオイの挑発に簡単に引っかかるガリヤは自身を失っていた。小太刀を用いたアオイ独自の捌きは、ガリヤの力任せの攻撃をいとも容易く回避して見せた。しかも言葉通りこちらに危害を一切加えていない。そこがまた憎らしい。
「くそっ!くそっ!くそぉ!クソがァっ!」
「……ただの一方的な攻撃は隙が多い。こんな風にーー」
今までで一番大きい刀身同士がぶつかる鈍い音が鳴り響く。ガリヤの長刀が、アオイの小太刀に押さえつけられ、アオイの手のひらがガリヤの目前に位置していた。
「…終わりです」
「…っ…っ!」
いくら力を入れても、自分の長刀は動かない。悔しいが、自分の負けを察した。そして、ガリヤの力が抜かれる。
「………さっさと引いてください。ここはあなた達が来ていい場所ではない。任務は私たちだけで遂行して見せます」
「甘ったれた事を……そんなんで本当に出来ると思ってんのか?」
「出来ます」
確信の二文字を瞳に宿らせ、アオイはガリヤに背を向けた。一瞬悔しげな顔をしたガリヤ…しかし、その表情はすぐに笑みを浮かべ出す。
「お前も可愛そうな奴だな」
「……何が言いたいんです?」
振り返らずそう問いかける
「お前の考えている甘ったれた事は、もう出来ねぇってこった」
「…………!あなたまさかーー」
「もう遅せぇよ!俺たちに構ったのが運の尽きだなぁ!」
殺気を込めた目でガリヤを睨みつける。察したくもない現実が、アオイに突きつけられようとしていた




