If〜もしもの話〜ヤヨイのはじめてのおつかいその4
「……ええっとヤヨイ先生?これは一体」
「ん?見て分からないか?魔物だよ。最近この付近で目撃情報があってな。ハクリ君の成長に丁度いいと思って連れてきたんだ」
「いや唐突すぎるでしょ!そうならそうと言ってくださいよ!」
「……それもそうだな。ハクリ君。特訓だ。戦うから準備をーー」
「もう遅せぇよ!」
「…さて、こんなことをしている暇はないぞ。敵はもう襲ってきているんだ」
「え……えぇ!!!!????」
ヤヨイがそう言ってやっと気がついた。目の前の魔物達は既にこちらに襲いかかってきていた。咄嗟に身構えるが、ヤヨイは立ち尽くしたまま眺めている。
「ちょ、ヤヨイ先生!危ないですよ!」
「いいかい?まず一つ目だ。こんな風に知能が低い魔物の類は一斉に襲ってくる事が多い。そんな時は出来るだけ距離を詰めて一気にーー」
手上に作られた魔方陣に詠唱を行う。素早く文字が書き記されていき、一つの魔法を発動するまでの時間はコンマ単位だった。
「第二対人滅魔法」
ゼロ距離まで接近していた敵に光の柱が伸びる。一瞬にして多数の魔物の姿が消し飛ぶ、または体の多くを失った。
力なくして消滅する魔物達。殺された仲間たちを前に、生き残りは危機感を感じる。
「ほら、こうやるんだ」
余裕そうな顔でハクリの元に振り向くヤヨイ。ハクリの感情に恐怖が浮かんだ。
「よくもいけしゃあしゃあと…そんな簡単に出来ませんよ」
「ふむ。まぁ君が使えるのは学園支給の魔札だからな。なら今回は戦いだけ教えて、今度実践してみよう」
「……そうさせて下さい」
「さて、残った残党達は、大体まばらになっているものだ。今のようにこちらが押している時はな」
ヤヨイがめ見向けた先には、空中からこちらを睨みつけている魔物達がバラバラに位置している。先程の第二対人滅魔法のせいだろう。
「そんな敵達にはこの魔法が有効的だ」
再び魔方陣を形成。素早く詠唱を終え、発動した魔法はーー
「第三十五聖系魔法」
指定した範囲内に、消費した魔力に比例したダメージを与える魔法だ。ヤヨイの指定した範囲は広く、残る残党を余裕で囲んでしまった。そして……一気に死滅。
「ふぅ…さて、今日の特別授業は終わりだ。少しは励みになっただろうか?」
「……あ、はい。なりましたすっごく…はい」
正直凄すぎて見入ってしまい、全く頭に入っていない。しかしまぁ……凄かった。
「さて、帰ろうか。運動をしたらお腹が空いてしまった」
「そうですね。はい」
ヤヨイの何も無かったかのような態度に、ハクリは戸惑うことしか出来なかった。




