If〜もしもの話〜リリィとお料理教室その3
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「さぁ食べるです!たくさん食べやがれです!」
「やめて!もう腹がア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
すごい力で押さえつけられ、作られた卵焼きを口に放り込まれる。小人族のパワーはハクリ1人じゃどうしようもできない。そしてなぜこうなったかと言うと…話は十分前に遡る。
「……うん。美味しい。美味しいぞこれ」
「ほ、ほんとですか!?嘘じゃねぇですか!?」
「あぁ美味い。俺が教えた分量をきちんと守ったようだな」
目の前に並ばれた卵焼きを次々口に運ぶ。それを見たリリィは嬉しそうに目を光らせた。
「やった…やったよ……!これでーー」
ブツブツとハクリには聞こえない声で何かを呟くリリィ。
「ところでさ」
そこでふとハクリが問いかける。
「お前なんでそんなに卵焼き作りたがるわけ?」
「っ!?」
そしてその質問に対して顔を赤く染めるリリィ。
「っ!ば、馬鹿野郎!そ、そそれはべ、べべ別に聞かなくてもいいでし…いいじゃねぇですか!」
あきらかに慌てふためくリリィ。所々口調崩れとるがな……
「……まぁ教えたくないならいいけどさ。ところでそこの卵焼きは?」
ハクリが指さしたのはリリィの隣にぽつんと放置された卵焼き、形が綺麗なところから失敗作ではないようだが……
「これは味付けを間違えたやつですよ。入れるものを間違えたです」
「でも形は綺麗だよな?一口食べて見てもいいんじゃないか?これを入れたらこんな味になるというのも覚えていて損は無いぞ?」
ハクリがそう言うと、リリィは前向きでは無いが橋を手に取る。
「…それじゃあいただくです」
小さめの量を口に運ぶ。
「うへぇ…やっぱりまじぃです」
目を×にしてそう告げるリリィ。
「そんなになるようなものを何を入れたんだよ」
「確か……そこにある瓶だったような気もしやすね……」
「そこ……もしかしてこれか?」
「へぇ?何言ってやがるんれすかぁ?私はそんな事言っちゃあいやせんよ……」
「…まてよ。これはーー」
リリィが指摘した瓶。色からして嫌な予感がする。先程から何故か呂律が回らないリリィ。頭でもおかしくなったかと思ったが……おそるおそる匂いを嗅いでみる
「これさけじゃーー」
「ろらぁ!」
凄い力で床に倒される。腰に痛みを覚えながらも目を開くと、目の前に広がるリリィの顔。要するにめっちゃ近かった。
「お、おいリリィ…おまっ何する気だ!」
「……るです」
「は?」
「食べやがるです!私の作ったたらまごやき全部食べやがれです!」
口に押し込まれる卵焼き。ハクリの教えた通りの作り方なので、自分好みの美味しい味だ。
「んぐ……おいリリィ!食べるからとりあえず退いてくれ!これじゃまともにーー」
「えい」
「ん゛ん゛ん゛!」
今までに作った分の卵焼きを箸でつかみ、飲み込む毎に口に突っ込む。この過程を何度繰り返したことか……いや美味しいんだけども
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
「さぁ食べるです!たくさん食べやがれです!」
「やめて!もう腹がア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
そしてここに行き着くわけだ
ちなみにこの過程は卵焼きをすべて食べ終わるまで続いた




