固有魔法
「………」
ダメですね……全くもって気配が感じられません…。本当に人が居ないのでしょうか…。
数分が経過した。アオイのセンスを持ってしても、気配一つ感じ取ることが出来ない。日頃の自分を信じるなら、これはいないと断定すべきなのだろうか…。そんな事を考えていた。考えていくうちに一つの考えが頭に浮かぶが、流石にありえないと思い振り払った。
「…ここはどこですか」
思い切ってそう発言するが、やはり帰ってくるのは沈黙である……そう思っていた。
「ここは独房だよ。少なくとも俺たちの意識下ではな」
返答が返ってきたのである。予想外の行動に、アオイは一瞬焦りを顕にした。
「っ……あなた、先程私の背後に立ち回った方ですよね?どうやったか教えてもらえますか?」
「おいおい俺はあんたの敵だぞ?それに少し図々しやしないか?」
「……私はここにいる暇はありません。あなたを退けてでもここを出ないとならないのです」
「ふーん……あっそ」
どうやらアオイの状況など知ったこっちゃないらしい。当たり前ではあるものの、焦っているアオイからしたら腹立たしい。
「………」
「まぁこのくらいは教えてやるよ」
諦めかけたアオイだったが、不意にそんな言葉を投げかけてくる男に反応する。
「…さっきあんたに近づいた方法。ありゃ俺の固有魔法だ……」
唾が喉に通る……。どうやら自分はとんでもない所に足を踏み入れたかもしれない……
そう思ったアオイだった。




