If 〜もしもの話〜ミルと地獄の猛特訓その7
ー買い物を始めて十数分後ー
「あ、これ良さそう!ねぇハクリ君!」
「おぉ……確かに」
ーさらに十分後ー
「みてよこれ!凄い綺麗だよ!」
「お、おぅ…確かに」
ーまたさらに十分後ー
「ねぇねぇハクリ君!これ可愛い!」
「そ、そうだな……」
ーまたまたさらに十分後ー
「ねぇねぇハクリ君!」
「うん…凄い」
ーまたまたまたさらに十分後ー
「ねぇねぇハクリ君!」
「…………すげぇ」
正直言ってハクリは限界に達していた。初めはノーマルテンションだったミルが、今はこうして逆に自分を振り回している。底知れぬ体力を有するミルについて行くだけでハクリは精一杯だった。
「あれ?ハクリ君どうしちゃったのさ。まだ買い物終わってないんでしょ?」
「いや買い物は終わったよ。とっくに……」
もはや目的を達成したかすらままならないミルは、きょとんとした顔で首をかしげる。
「ミルってあれだよな……以外に買い物好きと言うか」
「んーまぁよくするしね。下の子とかいるからよく来るんだ」
「ミルって姉ちゃんだったのか……以外」
「よく言われるよ」
ふと手に待った荷物を眺める。どれもルリに頼まれた品ばかりだが、唯一違うものが入っていた。
「ほれ、今日のお礼」
不意にハクリが投げ渡すと、ミルはそれを落としそうになったが、なんとかキャッチした。
「っとと…別にいいのに」
ハクリに渡された紙包みを眺めながらミルがそう告げる。ハクリは頬を掻きながら、照れくさそうにこう告げた。
「ま、まぁミルと一緒に買い物して楽しかったしな。お礼のつもり」
「そ、そう…」
「あ、それ帰ってから開けろよ。ミルに絶対似合うと思うから」
「ん??似合う?僕に?」
「そうそう……あ、そろそろ帰んないとやばいな。ごめんミル。これ帰るわ」
そう言葉を残し、颯爽と帰っていったミル。最後のハクリの言葉の意味は今はわかっていないが、このあと帰宅したミルが紙包みを開け、その中に可愛い髪留めが入っていた事で気づくことになる。
この時自分でも分かるくらいに顔が熱くなった事をミルは忘れない。




