辻褄
「流石にホコリがすごいな」
「それだけ誰も手入れしていないという事ですね。気をつけて進まないと…」
あらかた探し終えたハクリとアオイ。捜査も終盤に差し掛かっていた。内心ここもハズレだと思っていたハクリとアオイに、転機が訪れたのは…言うまでもないーー
「……声が聞こえる」
「…本当ですか?」
どうやらアオイには聞こえていないようだ。魔力の他にも五感まで発達したのだろうか…聞こえないというのが疑わしいくらいはっきり聞こえるその声は、そう遠くない。
「ここから…多分数十メートルくらい…人数は複数だな。3…いや、5だな」
「すごい…そこまで分かるんですか?」
「なんか冴えてるんだよな。怖いくらいに」
「……」
アオイの脳裏を過ぎったのは、シャーマックに掛けられた呪い。それを思い出すたびに、あの時の自分の愚かさを恨みたくなる。
「……アオイさん」
「っ……」
自分の頭に置かれた手。力強く、やさしいその手は、この上なく暖かいものだった。
「俺は大丈夫だから。心配しないで」
「……はい」
こんな目で見られたら、何も言い返すことが出来ない……
ーーずるいーー
そんな事を思いながらも、アオイは俯いていた顔を上げる。
「…とりあえず行ってみよう。戦闘の体制をとって」
「了解」
ハクリはハンドガンを、アオイはそのうちの一丁をライフルに変え、装備する。
そして、ゆっくりと近づいて行った。
足音を立てないように、ゆっくりと…ただゆっくりと進む。未だ声を止まず、会話をしている様だった。
「…まずは俺が見るから」
通路の角からそっと覗き込む。ほのかに灯る明かりの中に、ハクリの予想通り5人の人影が会話らしき事をしていた。
「…あれは」
気掛かりな点は2つ。
・廃墟で何故話しているのか
「……なんでーー」
ハクリが目の当たりにした光景は、絶対に廃墟等では見られないような光景。そっち系統の話しなら多分辻褄が合うのだろうが、この世界にそういった類のものがあるのだろうか……
「子ども……だと…っ」




