If 〜もしもの話〜イヨと誰かの新婚生活その7
「もうすぐ家に着いちゃいますね……」
「そうだな。明日からまた頑張らないと」
「……」
「どうしたんだよ。そんなに浮かない顔して」
帰路を進み、あと少しで我が家に到着しようとする時、イヨが暗いとまではいかないが、どこか本調子からそれた顔をする。
「楽しい時間は終わるのが早いなぁって思いまして……なんだか切ないです」
「……そうだな。つまらん労働とかは長いのにな」
イヨの言い分に俺は同意した。確かに楽しい時間はいつもの倍近くの速さで時が流れていく気がする。それは誰しも感じることだろう。イヨにとってはそれが切なくてたまらないらしい。
「…このまま楽しい時間ばかりだったら良いのに…そうは思いませんか?」
真っ直ぐに俺を見つめる瞳は真剣そのもので、俺も安易な回答はしないようにと思った。
「そりゃそうだろ…楽しい時間だけで生活できるなら、俺もそっちの方がいいわな……でもなーー」
イヨの手を握り、引く……。不意をつかれたイヨだったが、特に反応もなく身をゆだねてくれた。
「そんなつまらん事が起きなかったら、俺とイヨは今こうして一緒にいないよな……そう思うと…なんかこう……嫌な事もいいっつぅかさ……まぁなんだ…」
「……初めてカッコイイって思いました」
「失礼だなおい…今までで一度もなかったのかよ!」
「流石に冗談です。いつだってイヨにとってはカッコイイですよ?」
「お、おう…改めて言われると恥ずかしいなおい」
「一言言ってもいいですか?」
「……なんだよ」
顔の横でちょいちょいと手招きをするイヨ。どうやら耳打ちがしたいらしい。先程の恥ずかしさもあるため、何となく顔を近づけるとーー
「なっーー」
俺の頬に触れる柔らかくも小さな感触…言うまでもないが、イヨの唇が俺の頬に当たっていた……恥ずかしい言い方をすると、俺はキスをされている。
焦りを浮かべた俺の顔を見ながら、イヨは満面の笑みでこう言った。
「私はいつまでも大好きですよ。つまらない日々なんかありませんよ……だってあなたがいるんですから」




