If 〜もしもの話〜イヨと誰かの新婚生活その3
「あ!あれ見てくださいよ!」
「おい待てって…そんなに慌てたらーー」
「あた……っとと…ごめんなさいです」
テンションMAXではしゃぎ回るイヨ。前をろくに見ていないせいで、とある男性にぶつかってしまった。心優しそうな笑みを浮かべる男を前に、イヨは頭をぺこりと下げる。
「いいんだよお嬢ちゃん。でも、あんまりはしゃぐと危ないよ?」
「はいなのです!これからは気をつけ……お、お嬢ちゃんですか!?」
「次からは気をつけるんだよ」
「あ!ちょっとーー」
「おら」
「あたっ!な、何するんですか!」
イヨの頭に拳をお見舞した俺は何気ない顔で辺りを見回す。ちょうどお祭りが行われているようで、辺り一面出店やら屋台やらで賑わっていた。
「さて、どこから回ろうかね」
「無視ですか……イヨはわたあめが食べたいです」
「へいへいわたあめね。相変わらず子供みたいな事言うな」
「文句があるならご飯抜きにしますよ」
「ゴメンナサイ」
そんな会話をしながら祭りを楽しむ俺達だった。
わたあめを満足そうに食べ、イヨは次の獲物をキョロキョロと探し始める。そしてとある店を視界に捉えた。
「……射的?」
「あれやりたいです」
「お前射的出来なかったろ?やめとけやめとけ」
「その時はまた頼むので大丈夫です」
そう言いながら俺に親指を突き立てるイヨ。ため息を零しながらも「やれやれ」と言いながら注文に応えた。
「一回5発だよ。頑張ってお嬢ちゃん!」
「わ、私は大人です!こう見えても凄いんですからーー」
「いいからさっさとやっちまえ。でなきゃ帰る」
「ふえぇ!?ちょっと待ってくださいよ!」
あたふたと焦りながら玉を込めていくイヨ。俺はイヨが狙うであろう景品がなんとなく読めていた。そして、多分俺の役目が回ってくることも……
「よし!やりますよ!」
「さっさと売って失敗して代わってな」
俺の皮肉もイヨには届かず、イヨはその狙いを自分が欲しい景品に定める。
そして、案の定……
「……頼みます」
「へいへい。秒で終わるからまかせとけ」
そして俺の出番が来た




