謎の液体と透明人間
ー放課後ー
「これでHRは終わりだ。帰っていいぞ」
ヤヨイの言葉を最後に、姿が完全に見えなくなるまでの沈黙……そして。
「よし!すぐ行くからね!じゃあまた後で!」
「私もすぐ行きやすので!さよならです!」
「じゃあ私はお部屋を片付けてくるので、お気を付けて、マスター!」
「じゃあ私も早く行くわね……」
颯爽と出ていった4人。ハクリとシノアは二人何処かへと向かっていた。シノアの先導で進んでいるため、どこに向かっているかは定かではない。
「……どこ向かってんの?」
「……私の実験室です」
「帰っていい?」
「な、なんて事言うんですか!安心して下さい!ハクリ君の嫌がる事は何一つしませんからぁっ!」
本気で帰ろうとするハクリの腕に抱きつきながら必死に止めるシノア。
豊かな双山がハクリの腕にふにゃりと触れる。
「っわかった分かったから離れてくれ!」
「むう……着きましたよ……」
不機嫌になるシノア。よほど帰られたくなかったらしい。
重い音とともに開かれた扉は、この部屋がより危険で重要かを表しているようだった。
「この扉は力量向上魔法でも開けることは出来ない厳重な扉なんですよ!」
えっへんと豊満な胸を張るシノア。正直何を言っているのか分からない。
「……それで、そろそろここに来た理由を教えてくれよ」
ハクリがそう問いかけると、シノアは「ふっふっふ」と何処かの悪役が秘密兵器を出す時の様な笑い方をする。
「いきなりですがここで質問です」
「??まぁいいけどさ……」
「これからハクリ君は女子寮に侵入する訳ですが、そのままだとバレてしまいます。さてはて一体どうしたものでしょうか?」
「いやもう質問じゃないよね。ていうか侵入って言うなよ人聞き悪い」
「まぁまぁ……と、ここで困っているハクリ君にぴったりな薬品があるのです!」
パパパパッパパーとどこかで聞いたことのある効果音と共にシノアが俺に見せたのはそこが丸くなったビーカーの様なものに入った謎の液体。
「…………聞いておくがそれは何だ」
「その名も飲んだら透明人間になれる薬です!」
シノアの全く捻られていない調合物は紫色をしていた。毒々しいと言わんばかりのその液体を見て、ハクリは喉を鳴らした。
「……飲みたくない」
「え、えぇ!?一生懸命作ったんですよ!?飲んでください!」
「い、嫌だ!何か毒々しいんだもんこれ!」
と、激しい攻防の末―
「うげぇぇぇぇぇぇえ…」
その場で跪き、破滅の声を漏らすハクリ。シノアは満面の笑みでそれを見ていた。
「お味はどうですか?」
「どうもこうもあるか!この様子を見て単純明快だろうが!」
ハクリが飲んだ謎の液体Xは、それはもうこの世のものとは思えない味をしていた。
「…………それはそうと」
ハクリは自分の体をまじまじと眺める。
ハクリの体はちっとも透明にはなっていなかった。
それを察したようにシノアが口を開く。
「大丈夫ですよ。そろそろ透明になるはずですから」
「いやそうは言っても……ん?…え!?」
一瞬だった。ハクリが自分の手のひらをまじまじと見ている時に、瞬きをした瞬間に手のひらが自分の視界から消えたのである。
「無事消えましたね!ハクリ君の事はこのメガネで見る事が出来るので安心して下さい。効果時間は15分ですのでその間にルリさんの部屋に来て下さいね!」
そう言いながら早々とメガネをかけ、部屋を出ていこうとするシノア。
ハクリは透明になった自分の体に夢中でシノアの話を流すように聞いた。
「ではご無事を祈ります!」
 




