If 〜もしもの話〜イヨと誰かの新婚生活その2
「今日は何しますか?遊びますか?出かけますか?」
「お前…ほんとに成人?」
「むぅ…まだ言ってますよ。本当にご飯抜きにしてあげましょうか?」
「それは勘弁」
ぐっと背伸びをした後に、食事のあと片付けを行う。イヨが既に食器を洗い始めているため、俺は横から参加する形で食器を洗い始めた。
「今日は晴れてるし、出かけるか」
「ホントですか!?」
ぱあっと表情を明るくするイヨ。しかし洗い物をする手は止めない。
「行くとして近場が遠出か…明日は休みじゃないしな……どうしたものかーー」
「遠くに行きましょう」
「……おれの話聞いてた?」
「はい!遠くに行きましょう!」
「俺、明日、仕事、分かる?」
わざと区切りをつけて強調する俺を目前にしても、イヨは目をキラキラさせながら「遠く!遠くに行きましょう!」と繰り返す。
頭を悩ませる俺を見ても、イヨは「遠く!遠く!」と機械のように繰り返し続ける。
「イヨ…俺はな、働いてるの。分かる?遠くに行ったら次の日がーー」
ーーしゅんーー
「……」
わざとらしくしょげるイヨ。もはや俺の性格を知っての行動と見える。
「……はぁ、分かった分かりましたよ。遠くに出かけましょうね」
「ふっ……」
「おい…お前本当にーー」
「早速準備しましょう!」
洗い物が終わり、手を拭いたあとに駆け抜けていくイヨ。ゴソゴソと支度を始めていた。
その光景に呆気に取られながらも、俺は息を漏らす。
ーーまぁ、楽しそうならいいか。
少なくとも今の俺はそう考えていた……あんなことが起きるまではーー




