死を超える
「ゲほっ!な、なんでぇっ!?」
「喋られること自体おかしいのに…」
胸に突き刺さった矢を抜き取り、その場にかがみ込むシャーマック。慈悲の表れとでも言うように、ツバメとツバキは身を引いた。
「終わったんだよね?」
「臨終は死を司る技術。私が設定した余命はあと五分」
無慈悲にも余命宣告をするユア。シャーマックは恨めしそうにその光景を見つめていた。
「し、死にたくない……死にたくない…っ!」
顔を青く染め、自らの死を真っ向から否定したシャーマックは、未だ自分の胸部を押さえつけている。ただ、それを見て、ユア1人が微妙に顔をしかめた。
「……まさかね」
「この僕が…このボクが……こんな…っ!」
「お、終わりよ!もう観念しなさい!ユアが術を解かない限り、あなたに勝ち目なんてないんだから!」
「そ、そうです…!これに懲りてもう来ないことです!」
ツバメとツバキがそう告げる。しかし、ユアはそうは思わなかった。あのシャーマックが、こんな事で簡単に決着がついてしまう男には思えなかったからだ。それに、術が発動したなら、ユアのそれにはちゃんと合図がある。
それが、今まで出てきていない。
「…………」
急に黙りこくったシャーマックを前に、ユアの感情は焦りで染まった。
「2人とも、構えて……」
「え?どうして?終わったんでしょ?あなたちゃんと当てたじゃない」
「………………ぷっ」
ツバメの答えに、シャーマックは思わず吹き出してしまう。相手の哀れさに、無力さに、そして、自分の強さにーー
「あっはははははは!本当に勝ったなんて思ったんだね!」
自分の胸部を、傷も何も無い胸部を露わにしたシャーマックが、無慈悲にそう告げた。




