戦闘の中で
一発一発を丁寧に、かつ効果的に打ち込む。アオイに教わったのは、防御→攻撃だけではない。攻撃は最大の防御という言葉を嫌うアオイに教えて貰ったのは、攻撃は的確に相手をねじ伏せるものという言葉だ。
「ほう…いい攻撃だな。しかしまだ浅い」
ハクリの攻撃をしゃがむ事でかわし、一気にハクリの懐へと潜り込むスライク。下から見えるハクリの腹部目掛けてスライクの膝が迫る。
「……っ」
その膝をハクリは両の手で受け止め、そして次の行動に移る。捌き……
「!」
考えが浅かったのはスライクの方だった。相手を甘く見た故の失態。がら空きになった片方の足が払われてしまい、バランスを崩す。地面に背中を打ち付けた頃には、ハクリの次の攻撃が迫ってきていた。
「うぉらぁ!」
「ぐっ…」
ハクリの拳の動きが止まる。今にも殴りたい気持ちでいっぱいだが、どうしても動かない。見ると、自分の腕にスライクのものと思われる魔法陣が展開されていた。
「魔法陣の……応用か」
「これほどまでの高等技術。貴様には無理だろうな…細かい位置情報と座標、それを頭で特定し、更にはそれを行使する。どれだけの脳内容量を使うかは今の説明で承知できるはずだ」
「くそ……がぁっ!」
即座にハクリは左手を腰部分に動かす。
携えていた魔弾装填式ハンドガンを手に取り、銃口をスライクに向ける。
「……」
「……」
無言のままの時間が、僅かながら経過する。見つめ合う2人の感情はどこか緊張味を抜けたものが存在しており、それでしてこれから何が起きるかを互いに悟っているようだった。
「……終わりだ。これでーー」
無慈悲にも思えたハクリの指は、容赦なくトリガーを引いた。




