漆黒と臨終
いつもの茶色気味の髪の色が、今だけは漆黒に染まっている。巫女服のような戦闘服とより一層マッチしていて、彼女の可憐さは誰しも目を引くことであろう。
「そんなんじゃ僕のところまで届かなくなぁい?」
「馬鹿にしないで!」
自身の能力を秘めた一撃がシャーマック目掛けて放たれる。触れたものの寿命を操作するユアの能力。当たればほぼ確定的に勝利を勝ち取ることが出来る……しかし、旧式の武器である弓矢では、当てることがまず難しかった。自分の目前に襲い来る矢の数々を、シャーマックは魔法陣を盾にして防ぎきると、自身の攻撃に移る。
「っ!」
自分の足元に展開された魔法陣にいち早く反応し、ユアもすかさず反応して回避をとる。
さっきからこれの繰り返しだ。
「そろそろ限界かなぁ?動きが鈍くなってきたよお?」
「まだ私はやれる!絶対にあなたなんかに負けたりしないんだから!」
そう言うと、ユアは矢筒から矢を3本抜き取り、矢を引く。
「……3矢…一斉射撃!」
闇色に染まった三本の矢を、シャーマック目掛けて撃ちはなった。先ほどと同じように、シャーマックは魔法陣を形成する。
「何度も何度も同じ手…そろそろ僕飽きてきたなぁ……」
「今度はそうはいかないんだから!」
「およ?」
シャーマックが形成した魔法陣に、ユアの放った弓矢が触れる。今までなら押し切れずに速力を失うところだが、今回は違った。
「あるぇ…これってもしかしてやばい?やばいん?やばいんじゃ?」
そんなことを口走りながら、焦りを含めた笑みを浮かべるシャーマック。次第にヒビ入っていく魔法陣の盾。それは時間をかけることもなく簡単に砕け散った。
「うぐ……っ」
「やった……刺さった!」
ユアはそう『錯覚』した。やっとの事で破った第一関門。得たものは多く、その分手間がかかっただけそれを破った喜びのせいで相手を軽視していたのだ。
「惜しい……惜しいよ!僕が妖精族じゃなかったら君の勝ちだったねぇ!デモ残念!」
ユアの放った弓矢は、シャーマックの体に触れる前に、魔方陣に刺さっていた。
「そんな…あんなピンポイントに圧縮してる……」
弓矢の到達地点を予想し、サイズをギリギリまで圧縮することで密度を増せる。そうすればより硬い盾になる…そんな高等技術を、シャーマックは淡々とやってのけた。
「あっははぁはあはあはあ!君もまだまだなんだよね!あれくらいで僕がやられるわけないじゃん!あっはははは!お腹痛い!」
相変わらず相手を舐め腐った態度をとるシャーマックに、ユアは苛立ち以前に愕然とした。こうも自分の手が通じない相手に、果たして自分は生き残ることが出来るのだろうかと…。
力の差は、確かに目の前にあった。




