成長から
「よし…これなら」
「数日頑張った甲斐がありましたね。これなら大丈夫でしょう」
「まさか隊長があんなに勘が鋭いなんて…ちょっと感心したよ」
そんな些細ない話をするハクリ達は、お互いのやり場を終えた事を確認するために集合していた。そろそろイヨ達も戻って来る頃だろう。このままフィーレの待つ家で待っているのも吉だ。
「これでイヨも満喫しただろう…後はもう、神に頼ることしか出来ないが」
「きっと上手くいくよ。隊長頑張ってたもん」
「ユア……ありがとう」
「………」
「隊長ー!戻ったよー!」
「うぐっ!?」
突然腹部に走る鈍い痛み。抱きついてきたツバメの肩が、ハクリのボディ目掛けて突き当たる。ボディブローの痛みを初めて知った瞬間のように思えた。
「ツバメちゃん!隊長さんが痛そうです!」
後方からイヨとツバキが駆け寄ってくる。どうやら無事に帰ってきたようだ。
「それでは隊長。私達はこれでーー」
「あとは頑張ってね。隊長」
イヨに姿を見せまいと、ユアとアオイは早々に立ち去る。ここからは自分の仕事だ……。気を引き締めた。
「おかえり皆。今日は楽しめた?」
「うんっ!金平糖食べたよ!」
「そ、それから…い……いっぱい遊びました!」
ツバメとツバキがこの上ない満足感に浸った顔でそう伝えてくる。この様子だと、何も問題はなかったようだ。
「イヨも楽しかったですよ。久しぶりにこんなに遊びました」
「イヨちゃん凄いんだよ!気配だけで道案内できるし、人がいるところまで分かっちゃうんだからっ!」
そんなツバメの一言に、ハクリは思わず驚愕した。確かに前々からイヨの能力はすごいと感じていたが、まさかそこまでとは……
「そ、そうか…すごいなぁ」
「ふふっ……あまり褒めないでください。こうでも出来ないとまともに生活出来ませんから」
「今日は本当にありがとうイヨ。なにかお礼をしないとな」
「あ……ならーー」
ハクリの何気ない言葉に即座に反応したイヨは、何かあるのかすぐに声を出した。
「今日は一緒にいてくれませんか?二人きりで……」
「なっ……」
まさかそんな回答が来るとは思ってなかった。不覚にも自分の安易な考えを恨めしく思った……が、しかしーー
「良いんじゃない?ねぇツバキ」
「私もいいと思います。今日はイヨちゃんにお世話になりましたし」
「えっ!?ふたりとも!?」
「今日だけなんだから!ね?イヨちゃん」
「そ、そうなのです!今日だけ隊長さんはお貸ししますけど、明日からは皆平等です!」
「…………うん!」
少しの間呆気に取られていたイヨだったが、満面の笑みで回答すると、ハクリの手を握り、自宅へと駆け出す。
「……まぁ、いっか」
何故だかは分からないが、今日この日だけで、3人の成長が垣間見えた気がした。




