改心
時刻は夕刻を刻み、辺り一面が橙色の空に染まった頃、イヨはとある高場へとツバメとツバキを案内した。機密にハクリ達が動いているとも知らずに、イヨとツバメ、ツバキはこの一日を十二分に満喫した。
「綺麗です…」
「こんな景色が見れるなんてね……すごい」
「イヨのとっておきの場所です。何かあったらここに来るんですよ?」
街並、その先にある海の境界線。そこに沈む太陽がロマンチックな風景を極めつける。ふと各個人の頭を過ぎるのは、とある人物の顔だった。
「あ、あのーー」
思わず声をかけたのはツバキだった。めずらしく思い切った行動に出たツバキを前に、ツバメはその先の言葉を察した。
「イヨちゃんが隊長さんのお嫁さんって……本当なんですか?」
「……やっぱり皆さん同じ事を考えてましたか…」
クスッと笑みを零すイヨに、ツバキとツバメは恥ずかしそうに頬を染める。
「そうですね…私の中では、お兄さんはお婿さんですよ?」
「イヨちゃんの中で…ね」
「イヨちゃんの中で…ですか」
三人同時に吹き出し、無邪気な笑みを浮かべる。お互いの気持ちを分かり合い、尚且つ尊重し合う。これ程までの友情を、イヨは感じた事が無かった…そして今、結団が出た。
「ツバメちゃん、ツバキちゃん……」
今まで自分が欲しかったのはこんな感情だったのかもしれない。幼い頃から攻撃され、警戒心しか自分を信じる事しか出来ない人生の中で、自分は恵みと癒しが欲しかったのかもしれない。世界を嫌うことで自分の正しさを強調し、ろくに前も見ずに考えていたのかもしれない。でも、今は違う……
今こうして、見ず知らずだった自分と一緒に笑ってくれる【友達】がいる。フィーレだけではない。自分はこんなにも恵まれて、癒されているのだと、実感した。
これも全て…あの人の……
「私は変わりますよ」




