イヨ…その先へ
ハクリ達は戻った。連れ去られたイヨを抱えて……。血相かいて目尻に涙を浮かべたフィーレが出迎えて、事は無事に終えることが出来た。
実の話、ハクリ達にもそれとなく被害はあった。
それも襲われたとかそんなものではなく、主にアオイの本気によるもの。砲弾やら目で負えないスピードやらを勃発するおかげで、色んなものが落ちたり飛んできたりしてきた事は伏せておく。
夜風が心地よく肌を撫でる縁側。腰をかけ、夜空を眺めるハクリとイヨの2人は、それぞれ似たり寄ったりの事を考える。
「…イヨ」
「はい。何でしょうか?」
「その……ごめん。イヨを危ない目に合わせて」
俯くイヨを横目に、ハクリはそんな事を告げる。あんな事があった後だ。色々と思う事があるのは当たり前だろう。
「…私、目が見えないんです」
「……?」
そんなイヨが唐突にそんな言葉を放つ。思わず顔ごとイヨの方に向けてしまうほど、ハクリはその言葉の真相が気になった……いや、その先の言葉に期待してしまった。
「だから、お兄さんが私を助けてくれたってこと以外何にも分かりません。もちろん、この傷のことも……」
自らの首筋に手を当てる。そこには、ヴェルフの短剣によりついた切り傷の跡。それを露にはしないが、何となくその時のイヨは、ハクリに気を使っているように見えた。
「イヨ……」
「少し考えを改めてみます」
「……でも、それはーー」
「私は元々この世界には希望なんて無いって思っていましたから……それに、今はお兄さんがいます。結果的に、お兄さんは私を助けるために、他の人まで連れてきてくれたんですから……」
「イヨ」
「あ……っ」
らしくもないと自分でもつくづく思う。自分の胸に抱き寄せたイヨが、一瞬驚いた様だったが、直ぐに落ち着きを取り戻し、身を委ねる。ハクリの背中にイヨの細く小さな…それでもとても暖かい腕が当たり、ハクリの心情は限界に達した……。
「イヨ……」
「はい。何でしょうか?」
「あともう少しだ。明日から、俺の友達を連れてくるよ」




