If 〜もしもの話〜ヒノンとお勉強しましょう
「……」
「……あのー」
「…………」
「……おーい…」
「………………なに?」
「やっと返してくれた…」
学園内にある大図書館。その中で静かに本を読む、獣人族の少女ヒノン・ミルモント。それを横目に落ち着かない様子の間人族のハクリ。さて、どうしてこうなったのか……それは約数時間前に遡る。
「……一緒に…図書館に来て欲しい」
「……はい?」
それは、いつもの学園での授業の合間時間。毎回この時間に何かが起きるのはもう知っての通りだ。
そして、今日もこの時…出来事は起きた。
珍しく自分から声をかけてきたヒノンに、言われた一言に、ハクリは一瞬何を言われたのか分からなかった。
相変わらずの無表情。メガネを指で押し上げ、無言のままハクリの反応を待つ。
「……だめ?」
「いや急だったから戸惑っただけで、日時がよければ大丈夫」
「そう……なら…今日の放課後に……お願い」
「放課後か…了解」
「そう……なら…よろしく……お願い」
同じような言葉を続けて放ち、ヒノンは自席へと戻っていく。終始何があったのか結局整理がつかないが、とりあえずハクリの放課後の予定は埋まった。
と、いうから来てみたものの、無言のままの時間はなんと数時間も続いた。隣でただ本を読み続けるだけのヒノンに、ハクリの戸惑いはピークに達する。
「…………」
「……あのーー」
「あった……」
そう言って、ヒノンは読んでいた本のあるページをハクリに提示する。
その内容は……
「魔法詠唱力のつけ方…?」
「あなたには…これ……大事……だと思ったから」
そこに記されていたのは、ある意味技術本…技術をつけるための参考書のようなものだった。教科書よりわかりやすく、かつ細かく記されており、ハクリでも理解できた。
「……これを、俺に?」
「……(コクコク)」
何故だろう……なんか嬉しい。自分のためになにかしてもらうって事は、少しこそばゆいが、どこか嬉しい。
「……ありがとう。俺、頑張ってみる」
そして、ハクリの勉強が始まった。




